BS世界のドキュメンタリー「亀裂社会 10.7後のイスラエル」2025-10-14

2025年10月14日 當山日出夫

BS世界のドキュメンタリー「亀裂社会 10.7後のイスラエル」

2024年、フランス。

この文章を書いている時点では、和平交渉が進展して、人質の解放が実現しそうだ、ということになっている。(追記、2025年10月13日、その後の進展で、人質の解放ということになっている。)

こういう多角的な視点を持ち、冷静に何がおこっているかを語る番組が、どうして日本では作れないのだろうか。日本でのニュースというと、ガザを攻撃するイスラエルの残虐さ、戦争や飢餓に苦しむガザの人びと、ヨルダン川西岸でのイスラエル横暴……というようなことを、強いていえば、非常に扇情的に語ることが多い。

イスラエルの人たちは、何を思っているのか、政府はなぜそのような判断をしているのか、冷静に眺めることがまずは必要だろう。

イスラエルの人びとにとって、2022年10月7日のハマスによる攻撃と人質の事件は、きわめて衝撃的なものであったこと。これは、まず重要だろう。(だからといって、それまでのイスラエルのパレスチナへの態度が、良かったということではない。パレスチナの領域への強引で暴力的な入植は、問題があることは無論である。)

イスラエルの人たちの意見も多様である。パレスチナ、アラブの人たちとの共存を考える人もいれば、大パレスチナ主義……もっと広い領域が、そもそもユダヤ人のものである……を主張する人もいる。

いろいろな考えの人がいることは確かだが、ハマスの攻撃を契機にして、多くの人びとのものの考え方が変わってきたことは、確かなことであろう。

番組は、イスラエルについての取材であるが、もし、パレスチナの方について考えるとしても、イスラエルという国家をこの世界から滅ぼして、ユダヤ人を殲滅してしまえばいいと考える人もいるだろうし、ともかくもなんとかしてこの地域で共存をはかる道をさぐる人もいるだろう……このように思う。憎悪を描くことは、その鏡像としての相手の憎悪をイメージすることにつながる。

当たり前のことなのだが、イスラエルの人びとも、普通の人間なのである。だからこそ、人を憎悪することもあれば、一方で、友愛の精神も持ちうる。軍人として職務に忠実でありながら、平和をもとめる人もいる。普通の人間であり、だからこそ、残虐にもなりうるし、慈悲深くもなりうる。それを、イスラエル人だからこうである、パレスチナ人だからこうである……と簡単にきめつけすぎることが、まずは、自省すべきことのように思える。

イスラエルの軍人は残忍で戦争を好むものである、というようなステレオタイプの発想で考える、こういうことをまず止めるべきだろう。

そもそも歴史的にさかのぼってイスラエルの建国自体が間違いだったという観点もありうるが、しかし、これでは問題は解決しない。イスラエルいう国家がなくなったとして、その後、どうなるか具体的なプラン(実現可能)を示せなければ、意味がない。(まあ、今のイスラエル国民をまとめて新たに難民として世界に送り出してしまえばいい、というのなら、それはそれで一つの考え方であるとは思うが。)

現実的には、オスロ合意ぐらいの時点から考えて、たとえ融和はできないとしても、それほど暴力的にならずに、なんとか共存できる秩序をどうしたら構築できるか、というあたりのことを考えるべきかと、思うことになる。

人間の憎悪を消すことはできないかもしれないが、それがどのような形をとって表現されることになるかは、社会的にある程度コントロール可能……であるかもしれない。

2025年10月11日記

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2025/10/14/9809398/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。