よみがえる新日本紀行「木曽妻籠宿」 ― 2026-10-21
2026年10月21日 當山日出夫
よみがえる新日本紀行「木曽妻籠宿」
再放送である。2019年。オリジナルは、昭和44年(1969年)。
これは面白かった。
『夜明け前』は、若い時(学生のころ)に読んでいるし、わりと最近になってまた読んだ。もう一度、読みなおしてみたくなった。
古い宿場町をそのまま残す……現代では、文化財の保存であり、観光資源であり、地域活性化のため、ということで、よくおこなわれる。妻籠の場合は、非常に古い時代、大阪万博よりも前のころに、古い宿場町の町並みを残そうとしていた。この時代は、高度経済成長の時代であり、日本の地方の姿がどんどん変わっていったときになる。
そこの町並みの民家に人が住んで生活して、それを、まるごと残す。場合によっては、昔にもどす。これは、簡単なことではない。
見ていて印象的だったのは、窓のこと。硝子戸になっていたものを、格子戸にもどす。これは、たしかに昔はこうだったということになる。しかし、室内は暗くなる。
通りに面した窓は、蔀(しとみ)にする。今の障子(明障子)の古い形かとも思う。これで江戸時代の民家ということになる。さらにさかのぼれば、明障子の普及する以前の、日本の家屋は、室内はとても暗いものだった。こういうことについては、柳田国男が書いたものなどで、考えてみることになる。(最近、国宝指定になった日本の中世の農家の建物があるが、テレビで映っているのをみるかぎり、中は本当に暗い。)
現代では、室内の天井にどこでも照明器具があるのが当たり前になっている。だが、昔は、そんなことはなかった。
民家の保全のための改修工事のときに、有線の配線、と言っていたが、有線といっても、もう分からない人が多くなっているだろう。電話の普及よりも前の段階のことである。電電公社(今のNTT)の電話が都市部で普及するより前に、主に農村部などで使われていた。(私は、経験的に知っている。そのころ、今のように一人一人が、スマートフォンを持つような時代は想像することさえできなかった。)
昭和44年では、まだ、家の中に囲炉裏があって、柴をくべているのが普通にあった。こういうのは、今では、もうないだろう。あっても、観光用である。囲炉裏で燃やす木は、なんでもいいというわけではない。
キセルに刻み煙草をつめて、囲炉裏で火をつける……こんな生活のしぐさは、もう今では見られないことである。
昔の姿にもどすために、床屋の看板(青と赤と白のクルクル回る)を出さないようにということだったが、いたしかたないことかと思うが、これは、今はどうなっているだろうか。床屋の仕事が維持できるだけの人口が残っているかどうか、ということかとも思う。
昔の山林は、厳格に管理されていた。このことは、『夜明け前』でも詳しく書いてあることである。炭をやいたり、燃料の柴かりをしたり、その他、日常の人びとの生活にとって、山林はなくてはならないものだった。それが、明治なって制度が変わって、自由に山に入れなくなった。入会権をめぐる裁判などが、各地でおこされたことがあったと憶えているのだが、このごろでは、もうそういう話しも聞かなくなった。山林を必要とする人びとの生活のスタイルが変わってしまった(囲炉裏もカマドもなくなった)こともあるし、何よりも、人口減少がある。
大きなのこぎりで木を切って製材する仕事のシーンが映像として残っていた。おおが、とか、おが、というが、もう今では、こんな人間の力仕事で製材することはないだろう。現代では、機械化されていることである。
この時代の妻籠の宿場町の構成は、次のようだった。
旅館2軒 酒屋2軒 たばこ屋3軒 魚屋1軒 駄菓子屋3軒 郵便局 農協 小学校 寺
26戸 116人
もちろん、コンビニなどあろうはずがない。魚屋はあっても肉屋はない。場合によると、シカとかイノシシとかの狩猟はあっただろうが、店をかまえるということではなかったということだろう。
おコメはたくさん収穫できない。3か月しかもたない。残りは、ヒエやアワだったという。(これは、この時代だと、おコメを大量に消費する時代だったということもある。)五平餅が御馳走だったというのは、そういう生活があってのことである。
ルールとして、売らない、貸さない、壊さない、ということであった。原則としては、そうなのだが、これも、現代では維持するのが難しいかもしれない。昔の町並みを維持するためには、観光資源としての整備が必要になるので、しかるべき業者が入ってくることは、避けられない。高齢化、人口減少の地域であるので、なおさらである。
現在、妻籠から馬籠の間は、昔の中山道の道が残っていて、歩けるようになっているはずである。ここは、行ってみたいような、もう年をとったので面倒なような気である。だが、『夜明け前』は、もう一度読みなおしておきたい。
2026年10月14日記
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