『村上春樹雑文集』村上春樹 ― 2019-09-09
2019-09-09 當山日出夫(とうやまひでお)
村上春樹.『村上春樹雑文集』(新潮文庫).新潮社.2015 (新潮社.2011年)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100167/
続きである。
やまもも書斎記 2019年9月5日
『やがて哀しき外国語』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/05/9149531
村上春樹の理解のためには、重要な一冊になるだろうというのが、読んでの感想である。
まさにタイトルのとおり「雑文集」なので、読んで思うことなどかなり多方面にわたるが、二点ほど書いておく。
第一は、小説家としての村上春樹を理解するうえで重要な文章がいくつか収められている。特に、もはや伝説とでいうべきエルサレムでのスピーチ「壁と卵」が収録されている。その他にも、村上春樹の文学を理解するうえでキーとなるようなことばを多く目にする。
たとえば、
「仮説の行方を決めるのは読者であり、作者ではない。物語とは風なのだ。揺らされるものがあって、初めて風は目に見えるものになる。」(p.23)
一度書かれて読者にわたった小説は、読者がどのようにそれを読むかに委ねられる。作者の意図とかを、無理に表明するようなことはしていない。このほかにも、村上春樹が、文学について、小説について、物語について、音楽について、芸術について……どのような考えをもっているか、率直に語った文章が、いくつか収録されている。
第二は、これは、村上春樹の書いたもののいくつかに感じ取れることなのだが、いったいこれが何の役にたつのかわからないが、書くのが楽しいから書いてみる、とでもいうべき文章が収められていることである。
たとえば、「正しいアイロンのかけかた」とか「にしんの話」とか、ただ、そのことを書くのが楽しいので書いているとしかいいようのない文章である。
以上の二点が、読んで思うことなどである。
さらには、ジャズについていくつかのまとまった文章があり、また、『アンダーグラウンド』をめぐって、その周辺のことに筆がおよんでいる。このあたりの文章は、村上春樹を理解するうえで、かなり重要な意味をもってくるにちがいない。「雑文集」というタイトルではあるが、村上春樹の文学を理解するためには重要な文章……外国語版の小説への前書きとか、各種の文学賞の受賞のことばとか……これらは、村上春樹を読むために参考になるべき一冊であると思う。
次は、翻訳を読んでみたいと思う。『ティファニーで朝食を』である。
https://www.shinchosha.co.jp/book/100167/
続きである。
やまもも書斎記 2019年9月5日
『やがて哀しき外国語』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/05/9149531
村上春樹の理解のためには、重要な一冊になるだろうというのが、読んでの感想である。
まさにタイトルのとおり「雑文集」なので、読んで思うことなどかなり多方面にわたるが、二点ほど書いておく。
第一は、小説家としての村上春樹を理解するうえで重要な文章がいくつか収められている。特に、もはや伝説とでいうべきエルサレムでのスピーチ「壁と卵」が収録されている。その他にも、村上春樹の文学を理解するうえでキーとなるようなことばを多く目にする。
たとえば、
「仮説の行方を決めるのは読者であり、作者ではない。物語とは風なのだ。揺らされるものがあって、初めて風は目に見えるものになる。」(p.23)
一度書かれて読者にわたった小説は、読者がどのようにそれを読むかに委ねられる。作者の意図とかを、無理に表明するようなことはしていない。このほかにも、村上春樹が、文学について、小説について、物語について、音楽について、芸術について……どのような考えをもっているか、率直に語った文章が、いくつか収録されている。
第二は、これは、村上春樹の書いたもののいくつかに感じ取れることなのだが、いったいこれが何の役にたつのかわからないが、書くのが楽しいから書いてみる、とでもいうべき文章が収められていることである。
たとえば、「正しいアイロンのかけかた」とか「にしんの話」とか、ただ、そのことを書くのが楽しいので書いているとしかいいようのない文章である。
以上の二点が、読んで思うことなどである。
さらには、ジャズについていくつかのまとまった文章があり、また、『アンダーグラウンド』をめぐって、その周辺のことに筆がおよんでいる。このあたりの文章は、村上春樹を理解するうえで、かなり重要な意味をもってくるにちがいない。「雑文集」というタイトルではあるが、村上春樹の文学を理解するためには重要な文章……外国語版の小説への前書きとか、各種の文学賞の受賞のことばとか……これらは、村上春樹を読むために参考になるべき一冊であると思う。
次は、翻訳を読んでみたいと思う。『ティファニーで朝食を』である。
追記 2019-09-12
この続きは、
やまもも書斎記 2019年9月12日
『ティファニーで朝食を』村上春樹訳
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/12/9152538
この続きは、
やまもも書斎記 2019年9月12日
『ティファニーで朝食を』村上春樹訳
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/12/9152538
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_ じゅうのblog - 2020-01-31 20時14分42秒
「村上春樹」の雑多な作品を収録した『村上春樹 雑文集』を読みました。
[村上春樹 雑文集]
「村上春樹」作品は1年ちょっと前に読んだエッセイ集『やがて哀しき外国語』以来ですね。
-----story-------------
1979−2010 未収録の作品、未発表の文章から著者自身がセレクトした69篇。
デビュー作「風の歌を聴け」受賞の言葉。
エルサレム賞スピーチ「壁と卵」。
『海辺のカフカ』中国語版に書いた序文。
ジャズ、友人、小説について。
そして二つの未発表超短編小説。
「1995年」の考察、結婚式のお祝いメッセージ。
イラスト・解説対談=「和田誠」・「安西水丸」
-----------------------
肩の力を抜いて気軽に読める作品はないかな… と思いながら書棚を探して選んだ一冊、、、
ちょっとひねくれた視点でリズム良く綴られる「村上春樹」の文章(本作品に収録されているのはエッセイだけではないので"文章"って表現にしました)が、好きなんですよねえ。
■前書き――どこまでも雑多な心持ち
■序文・解説など
・自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)
・同じ空気を吸っているんだな、ということ
・僕らが生きている困った世界
・安西水丸はあなたを見ている
■あいさつ・メッセージなど
・「四十歳になれば」
――群像新人文学賞・受賞の言葉
・「先はまだ長いので」
――野間文芸新人賞・受賞の言葉
・「ぜんぜん忘れてていい」
――谷崎賞をとったころ
・「不思議であって、不思議でもない」
――朝日賞・受賞のあいさつ
・「今になって突然というか」
――早稲田大学坪内逍遥大賞・受賞のあいさつ
・「まだまわりにたくさんあるはず」
――毎日出版文化賞・受賞のあいさつ
・「枝葉が激しく揺れようと」
――新風賞・受賞のあいさつ
・自分の内側の未知の場所を探索できた
・ドーナッツをかじりながら
・いいときにはとてもいい
・「壁と卵」
――エルサレム賞・受賞のあいさつ
■音楽について
・余白のある音楽は聴き飽きない
・ジム・モリソンのソウル・キッチン
・ノルウェイの木を見て森を見ず
・日本人にジャズは理解できているんだろうか
・ビル・クロウとの会話
・ニューヨークの秋
・みんなが海をもてたなら
・煙が目にしみたりして
・ひたむきなピアニスト
・言い出しかねて
・ノーホェア・マン(どこにもいけない人)
・ビリー・ホリデイの話
■『アンダーグラウンド』をめぐって
・東京の地下のブラック・マジック
・共生を求める人々、求めない人々
・血肉のある言葉を求めて
■翻訳すること、翻訳されること
・翻訳することと、翻訳されること
・僕の中の『キャッチャー』
・準古典小説としての『ロング・グッドバイ』
・へら鹿(ムース)を追って
・スティーヴン・キングの絶望と愛――良質の恐怖表現
・ティム・オブライエンがプリンストン大学に来た日のこと
・バッハとオースターの効用
・グレイス・ペイリーの中毒的「歯ごたえ」
・レイモンド・カーヴァーの世界
・スコット・フィッツジェラルド――ジャズ・エイジの旗手
・小説より面白い?
・たった一度の出会いが残してくれたもの
・器量のある小説
・カズオ・イシグロのような同時代作家を持つこと
・翻訳の神様
■人物について
・安西水丸は褒めるしかない
・動物園のツウ
・都築響一的世界のなりたち
・蒐集する目と、説得する言葉
・チップ・キッドの仕事
・「河合先生」と「河合隼雄」
■目にしたこと、心に思ったこと
・デイヴ・ヒルトンのシーズン
・正しいアイロンのかけ方
・にしんの話
・ジャック・ロンドンの入れ歯
・風のことを考えよう
・TONY TAKITANIのためのコメント
・違う響きを求めて
■質問とその回答
・うまく歳をとるのはむずかしい
・ポスト・コミュニズムの世界からの質問
■短いフィクション――『夜のくもざる』アウトテイク
・愛なき世界
・柄谷行人
・茂みの中の野ネズミ
■小説を書くということ
・柔らかな魂
・遠くまで旅する部屋
・自分の物語と、自分の文体
・温かみを醸し出す小説を
・凍った海と斧
・物語の善きサイクル
■解説対談 安西水丸×和田 誠
■文庫版のためのあとがき 村上春樹
全体的に愉しめましたが… その中でも、音楽に関する文章は特に面白く読めましたね、、、
「ホレス・シルヴァー」、「セロニアス・モンク」、「マイルス・デイヴィス」、「アート・ブレイキー」等々、久しぶりにジャズが聴きたくなりましたね… しかも、できればCDやスマホじゃなくてLPレコードで、LPレコードの持つ、あの独特の雰囲気を久しぶりに味わいたくなりました。
もちろん、ロック/ポップスも大好きなので、「ザ・ビーチ・ボーイズ」、「ザ・ビートルズ」、「ジム・モリソン(ドアーズ)」、「ボブ・ディラン」等々も聴きたくなりました… そもそも、最近、ゆっくり音楽を愉しむことができていないよなぁ、、、
あと、久しぶりに「スティーヴン・キング」の作品も読みたくなりました… 共感できることや、音楽や書籍について再発見することもあり、愉しめる一冊でした。
[村上春樹 雑文集]
「村上春樹」作品は1年ちょっと前に読んだエッセイ集『やがて哀しき外国語』以来ですね。
-----story-------------
1979−2010 未収録の作品、未発表の文章から著者自身がセレクトした69篇。
デビュー作「風の歌を聴け」受賞の言葉。
エルサレム賞スピーチ「壁と卵」。
『海辺のカフカ』中国語版に書いた序文。
ジャズ、友人、小説について。
そして二つの未発表超短編小説。
「1995年」の考察、結婚式のお祝いメッセージ。
イラスト・解説対談=「和田誠」・「安西水丸」
-----------------------
肩の力を抜いて気軽に読める作品はないかな… と思いながら書棚を探して選んだ一冊、、、
ちょっとひねくれた視点でリズム良く綴られる「村上春樹」の文章(本作品に収録されているのはエッセイだけではないので"文章"って表現にしました)が、好きなんですよねえ。
■前書き――どこまでも雑多な心持ち
■序文・解説など
・自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)
・同じ空気を吸っているんだな、ということ
・僕らが生きている困った世界
・安西水丸はあなたを見ている
■あいさつ・メッセージなど
・「四十歳になれば」
――群像新人文学賞・受賞の言葉
・「先はまだ長いので」
――野間文芸新人賞・受賞の言葉
・「ぜんぜん忘れてていい」
――谷崎賞をとったころ
・「不思議であって、不思議でもない」
――朝日賞・受賞のあいさつ
・「今になって突然というか」
――早稲田大学坪内逍遥大賞・受賞のあいさつ
・「まだまわりにたくさんあるはず」
――毎日出版文化賞・受賞のあいさつ
・「枝葉が激しく揺れようと」
――新風賞・受賞のあいさつ
・自分の内側の未知の場所を探索できた
・ドーナッツをかじりながら
・いいときにはとてもいい
・「壁と卵」
――エルサレム賞・受賞のあいさつ
■音楽について
・余白のある音楽は聴き飽きない
・ジム・モリソンのソウル・キッチン
・ノルウェイの木を見て森を見ず
・日本人にジャズは理解できているんだろうか
・ビル・クロウとの会話
・ニューヨークの秋
・みんなが海をもてたなら
・煙が目にしみたりして
・ひたむきなピアニスト
・言い出しかねて
・ノーホェア・マン(どこにもいけない人)
・ビリー・ホリデイの話
■『アンダーグラウンド』をめぐって
・東京の地下のブラック・マジック
・共生を求める人々、求めない人々
・血肉のある言葉を求めて
■翻訳すること、翻訳されること
・翻訳することと、翻訳されること
・僕の中の『キャッチャー』
・準古典小説としての『ロング・グッドバイ』
・へら鹿(ムース)を追って
・スティーヴン・キングの絶望と愛――良質の恐怖表現
・ティム・オブライエンがプリンストン大学に来た日のこと
・バッハとオースターの効用
・グレイス・ペイリーの中毒的「歯ごたえ」
・レイモンド・カーヴァーの世界
・スコット・フィッツジェラルド――ジャズ・エイジの旗手
・小説より面白い?
・たった一度の出会いが残してくれたもの
・器量のある小説
・カズオ・イシグロのような同時代作家を持つこと
・翻訳の神様
■人物について
・安西水丸は褒めるしかない
・動物園のツウ
・都築響一的世界のなりたち
・蒐集する目と、説得する言葉
・チップ・キッドの仕事
・「河合先生」と「河合隼雄」
■目にしたこと、心に思ったこと
・デイヴ・ヒルトンのシーズン
・正しいアイロンのかけ方
・にしんの話
・ジャック・ロンドンの入れ歯
・風のことを考えよう
・TONY TAKITANIのためのコメント
・違う響きを求めて
■質問とその回答
・うまく歳をとるのはむずかしい
・ポスト・コミュニズムの世界からの質問
■短いフィクション――『夜のくもざる』アウトテイク
・愛なき世界
・柄谷行人
・茂みの中の野ネズミ
■小説を書くということ
・柔らかな魂
・遠くまで旅する部屋
・自分の物語と、自分の文体
・温かみを醸し出す小説を
・凍った海と斧
・物語の善きサイクル
■解説対談 安西水丸×和田 誠
■文庫版のためのあとがき 村上春樹
全体的に愉しめましたが… その中でも、音楽に関する文章は特に面白く読めましたね、、、
「ホレス・シルヴァー」、「セロニアス・モンク」、「マイルス・デイヴィス」、「アート・ブレイキー」等々、久しぶりにジャズが聴きたくなりましたね… しかも、できればCDやスマホじゃなくてLPレコードで、LPレコードの持つ、あの独特の雰囲気を久しぶりに味わいたくなりました。
もちろん、ロック/ポップスも大好きなので、「ザ・ビーチ・ボーイズ」、「ザ・ビートルズ」、「ジム・モリソン(ドアーズ)」、「ボブ・ディラン」等々も聴きたくなりました… そもそも、最近、ゆっくり音楽を愉しむことができていないよなぁ、、、
あと、久しぶりに「スティーヴン・キング」の作品も読みたくなりました… 共感できることや、音楽や書籍について再発見することもあり、愉しめる一冊でした。
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