『とと姉ちゃん』「常子、花山の過去を知る」「“あなたの暮し”誕生す」2025-09-14

2025年9月14日 當山日出夫

『とと姉ちゃん』「常子、花山の過去を知る」「“あなたの暮し”誕生す」

このドラマを見るのは、二回目である。最初の放送のときは、さほどいいと思ってはいなかったのだが、二回目を見ると、よく頑張って作ってあると感じるところがいくつかある。

前にも書いたが、戦後の闇市のセットは、よく作ったと思う。かなり大規模に、細かなところまで、作ってある。こういうことを背景にしてこそ、この時代の普通の人びと……市民、庶民、大衆……の気持ちを描くことはできない、と思わせるところがある。

常子たちの願いを聞き入れて、花山は、常子たちの雑誌作りに協力することになる。結果として、これが、『暮しの手帖』に繋がることになるので、失敗はしないということで、ここは安心して見ていられる。

ただ、この時代だと、たくさんの雑誌や出版社が出来ては潰れていった時代だったかと思うのだが、その中で、常子たちの会社が生き残れたのは何故かということが、説得力を持って描けるかどうかは、また、別の問題である。出版の会社を銀座におきたいというのは、はたしてどうなのだろうか。普通に考えれば、多くの印刷や出版関係の会社があつまっている神保町界隈が適当かとも思える。銀座に会社があるからといって、雑誌を買う人はいないとも思えるのだが。

常子の女学校の同級生だった綾が、カフェでつとめている。カフェの女級というのは、この時代においては、女性が働くとして、おそらく最下層の労働の一つだった。この時代よりいくぶん古いが、『放浪記』(林芙美子)を読むと、カフェの女級まで身をおとすと、それから下は、もう娼婦しかない、ということが書かれている。戦後になったからといって、そう大きく変わったということはないだろう。強いていえば、進駐軍の兵士相手に、新しく仕事をする女性たちが登場するようになった、ということぐらいだろうか。

ドラマの中では、(この週に放送の分では)はっきりとそう語っているわけではないが、視聴者の想像のなかでは、綾は私娼の一歩手前というあたりだったことが、想像されるかと思う。

闇市で仕事をしたり、バラックで生活したり、やむをえずカフェではたらいたり、この時代の人びとの生活の感覚を描こうとしていることは分かるし、これは、それなりに成功しているドラマだと思う。

2025年9月12日記

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