私的じんもんこん2010覚書(4)2010-12-23

2010-12-23 當山日出夫

ちょっと忙しくしていて時間があいてしまった。それも、今日の授業で終わる。

さて、一般の研究発表の他に面白かったのは、

基調講演
文化財アーカイブを取り巻く現状と展望
津田徹英(東京文化財研究所)

であった。話しとしては、文化財のデジタルアーカイブにおける、相互の信頼関係の問題、というところである。とにかく、具体的な事例が出てきていたのが、興味深い。

(ここでは名前は出さないが、講演では、きちんと実名を出して発表)、ある文化財の全集、そこから、ある有名寺院に関連する資料がごっそりと抜け落ちてしまっている。つまりは、その全集の出版もとと、寺院との間の、コミュニケーションの不足、相互の、信頼関係を気づけなかったから。

これを、実際の美術全集で、空白になった写真の箇所を、見せられると、なるほど、とおもうのである。

そして、重要だと思うのは、この講演で述べられたようなことが、今後の、人文学とコンピュータ利用の世界のなかで、ますます重要になってくるということである。

文化財の多くは、個人であったり、寺社であったりの、場合が多い。(博物館への寄託などもふくめて。)そこで、まず、必要になるのは、その「所蔵者」の個人・寺社などとの、信頼関係を、どのように構築・維持していくか、ということである。

このことについては、既存の人文学の世界では、それなりのものをこれまでにきづきあげてきている。あるいは、少なくとも、相互に、どのようなルールがあるかの認識は共有できるようになっている、と言ってよいであろう。

そこにコンピュータをつかった人文学研究がはいってきて、さて、どうなるだろう。これまでに、つちかってきた、文化研究の歴史的経緯を、きちんと尊重してくれるだろうか。まずは、このあたりの、相互の、コミュニケーションの場をつくっていくことから必要になってくるのではないだろうか。この意味では、画像データなどが簡単に利用できるようになった今日これからこそが、本当の意味で、人文学研究者、文化財の所有者・管理者、情報工学の研究者、それぞれの立場から、話しをする場面が必要になってきているように思われる。

全体の印象としては、今回の「じんもんこん」からは、この基調講演は、非常に価値のあるものだったと思う。このことの意義を、情報工学系の研究者の人たちが十分に理解してくれるとありがたいと思うのである。

當山日出夫(とうやまひでお)

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