『虎に翼』「朝雨は女の腕まくり?」2024-05-05

2024年5月5日 當山日出夫

『虎に翼』第5週「朝雨は女の腕まくり?」

結局、事件は冤罪、自白の強要ということで、決着をみることになった。

ただ、今の時代、いや昔からそうなのだと思うが、政界、財界のからんだ贈収賄事件というと、どうしても有罪に決まっている、政治家も資産家も悪いことをするものだ、という固定観念で見てしまいがちである。もし、法的に有罪が立証できないとしても、政治家としての道義的責任というのを、マスコミなどは追及することになる。まさに、現在の自民党のいわゆる裏金問題の報道は、この発想で固まっている。(個人的に思うことを書いてみるならば、現在の政治家には、「潔さ」というものが欠如していると感じることになる。)

記憶にあるところでは、ロッキード事件、リクルート事件、佐川急便事件など、いろいろと政治にかかわる事件があった。これらの事件において、多くの国民の印象は、政治家は悪いに決まっている、悪い政治家は責任をとって辞めるのが当然だ、という空気のなかにいるかと思う。(少なくともこのうち、ロッキード事件については、真山仁の『ロッキード』など読むと、はたして田中角栄は犯罪をおかしたのかどうか、疑問に思うところがある。)

ドラマとしては、冤罪事件ということで、父親は無罪ということになった。それでは、恰好がつかないので、本当の黒幕、事件をたくらんだ張本人は別にいるという筋書きになっていた。まあ、こうでもしないと、現在の多くの視聴者の納得はえられないのだろう。

そして、冤罪事件ということで、自白の強要、自白のみによる起訴ということの無理を、描き出したことになり、さらには、寅子の法というものに対する認識を確認するという流れになっていた。このあたりは、おそらく、ヒロインが、戦後になって裁判官になっていくことの伏線になるのかと思って見ていた。

戦前の法廷では、裁判官と検事が壇上に座り、弁護士と被告が下にいる。これは、明治村(朝ドラではよく登場するが)に行くと、戦前の法廷が移築されて公開されているので、実際の様子を見ることができる。

事件と裁判は、昭和一〇年から一一年にかけてであるが、二二六事件のことはまったく出てこなかった。このあたりは意図的なのだろうと思うが、これから世相をどう描いていくことになるのか気になるところでもある。

ところで、ドラマを見ていて気になることがいくつかある。

女子学生たちの座る席である。自分たちを特別あつかいしないでほしいと、寅子は言っていたが、女子学生の五人は、最初にあてがわれた正面の前の席にかたまっている。もし男子学生と同じように振る舞うとするならば、五人がそれぞれに自由な席についてもいいはずである。

このあたりは演出の都合かとも思う。五人がならんで座っていていると、一つの画面で女子学生全員をおさめることができる。ばらばらに座っていると、個別に映さなければならない。

学生の座る席と、授業に臨む態度、成績……これらは、かなり微妙な関係がある。(昨年度まで、教壇から学生を教えてきた感覚からするならばであるが。)たぶん、よねは、一番前の正面に座るだろう。寅子は、2~3列目の少し横にそれた席かもしれない。梅子は一番後ろだろうか。

学生たちが字を書くとき、みな鉛筆を使っている。母親の日記も鉛筆書きである。この時代なら、鉛筆もあり得たとは思うが、より一般的には、ペンだろう。万年筆かもしれないし、あるいは、ペン軸に金属のペン先をつけたものかもしれない。これだと、インク壺にインクを入れて持ち歩くことになる。

ペンにインクをつけて書くのは、私の中学、高校生のころまで、普通に行われていたことである。昭和三〇年代、四〇年代のことになる。Gペンとか、スクールペンとか、いくつか種類があった。

ちょっと調べてみると、これらは今でも売っている。主に漫画を描くための用途のようである。コミックペンという言い方もするらしい。

それから、寅子たちが、事件の調書をめぐる話しを、おしるこ屋さんの店内で話しているのは、どうなのだろうか。となりの席には、他のお客さんもいる。これが、居酒屋などで、新聞記事について話題にするということなら、そういうこともあり得たかと思うが、事件の関係者しか知り得ないような情報について、おしるこ屋さんの店内で話し合うというのは、ちょっと無理があるように感じた。

次週は、試験のことになるようだ。何人合格できるだろうか。次週も楽しみに見ることにしよう。

2024年5月4日記

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