私的「じんもんこん2007」覚え書き(7)2007-12-29

2007/12/29 當山日出夫

二日目の午後は、ポスターセッションから始まる。会場(京大会館)の都合もあるのだろうが、部屋が狭いのが難点。一つのポスターの前に説明者(発表者)が立つと、もう余分な場所がない。一度に話しを聞けるのは、1~2名ということになってしまう。

また、あまり時間がなかったのも、残念である。結局、私が、じっくりと話しを聞けたのは、この発表だけだった。  

国際敦煌プロジェクトデータベースの展開 坂本昭二さん(龍谷大)

龍谷大学は、IDP(国際敦煌プロジェクト)における日本の拠点の一つでありながら、また、独自のデータベース構築もおこなっている。きわめて高精細な画像処理技術を使っている。

実は、昨年の「じんもんこん2006」(同志社大学)にさかのぼる。このときも、発表(ポスター)があった。この時のテーマは、墨筆の文献の、墨の色を計測して、文献の分類を試みようというもの。正直いって、私は、この方法・発想について、無理だろうと思っていた。発掘時期・場所、さらに、その後の保存状態、あるいは、もともとの文献の成立事情が様々に異なるものを、墨色だけで分析するのは、不可能と考えていた。

しかし、実際の発表で話しを聞いてみると、意外とそうでもない……逆に、きわめて有望な方法かもしれないと、思うようになった。

現在のデジタル色彩処理の技術では、色を正確に補足し記録・表現できる。そこに、研究者の人為的恣意的な解釈の入り込む余地はない。(ただし、最終的に、文献の解読レベルになれば、人間の仕事になるが。)

今回の発表は、それに続くもの。紙(料紙)を漉いたときの、簀の子の目の間隔を、文書の高精細画像から判定しようとするもの。肉眼では見ることのできない世界である。それを、正確に、かつ、機械的に、計測して見せてくれる。

古典籍・古文書の類を、コンピュータでどう処理するかというのは、これまでいろいろ試みられてきている。古文書OCRであったり、絵画(奈良絵本など)の色彩の復元であったり。

だが、古典籍・古文書をあつかうとき、人文学系の専門家の目から見れば、まず、基本は、紙と墨。その質と色。文字を読むのは、その次の段階である。

この意味において、龍谷大学のデジタル・アーカイブ、特に、高精細画像による文献の分析には、期待したい。当然ながら、技術面での中心は理工学部(瀬田キャンパス)にあるが、それに、人文学系研究者から、どれほどの理解と協力が得られるか、である。

當山日出夫(とうやまひでお)

オリンパスE-1とE-32007-12-29

2007/12/29 當山日出夫

景観文字研究……というようなことをやっていると、どうしてもカメラに凝っ てしまう。あるいは凝らざるをえない。

コンパクト・デジカメが使えない……というのが、正直なところ。簡単にいえ ば、老眼……ではなくて、加齢にともなう眼の遠近の調整機能の変化……が、 ある。コンパクト・デジカメの背面のディスプレイでは見えない。視度調整機 能つきのファインダがないと、ピントも構図も、露出など様々なモード設定が 確認できない。

というわけで、どうしても、デジタル一眼レフということになる。マニュアル のフィルムカメラとしては、ニコンF2が最高傑作だと思い、F3・FE2・ FAと、マニュアル機を使いながらも、レンズのツメをつけたままの、ニッコ ールレンズを使い続けてきた。

デジタル一眼レフを選ぶとき、あれこれ考えて、デジタル専用設計で新しくス タートした、オリンパスを選ぶことにした。フォーサーズ規格である。

新しいオリンパスE-3を持って、京都の祇園の街を歩く。出勤途中(?)の 舞妓さんとすれちがったりもするが、カメラを向けることはない。ひたすら、 「祇園」の文字を探して写す。以前、悉皆的に調査したのは、1年以上前にな る。その間にいくつかの、興味深い変化があった。これについては、来年初頭 の、立命館の土曜講座で話しをするつもり。(一般向けの市民講座ではあるが、 地元の京都であるから、最新の調査に基づかないといけない。)

写した写真を見て……古いE-1が、棄てがたいとの印象を持った。色が違う。 旧E-1は、コダック製のCCDを使っているのだが、非常にすなおな色を出 す。一見するときわめて地味な色合いになる。しかし、実際の色に近いといえ そうだ。5メガの画質だが、実用的にはこれで十分。

しかしながら……このような文章を書いている暇があったら、東京外大AA研 から頼まれた原稿を「年内」に書かないといけない。たぶん、来年も、1月1 日の朝から、パソコンを起動することになりそうだ。

當山日出夫(とうやまひでお)