第114回の訓点語学会2016-05-24

2016-05-24 當山日出夫

5月22日は、京都大学文学部で、第114回の訓点語学会。このごろ、日本語学会の方はさぼりぎみであるが(会費は、はらってはいるが)、訓点語学会だけは、出るようにしている。

会員数は減少傾向にあるらしい。それでも、400名ちかくの会員がいる。学会としては、小規模な方だろうが、研究発表会に出席する立場としては、これぐらいの規模の学会がちょうどいい。

規模が大きくなりすぎると、研究発表会の会場が分かれてしまうことがある。それに懇親会に出ても、人が多すぎて、困惑する。

で、今回の訓点語学会であるが……私個人の興味としては、なかなか興味深かった。特に文字(漢字・仮名)についての発表があった。

最初の発表、略字「仏」の使用拡大と位相(菊地恵太)。
文字(漢字)についていえば、文字の「位相」というのをどう考えるかという論点がある。この点については、すでに、笹原宏之の研究がある。今回の発表についてみるならば、質疑の時にも指摘されていた観点として、漢字が使用されるとき、仏教語として使われているのか、あるいは、そうではない、漢籍の中で使われているのか、これを考えてみないといけないだろう。そのうえで、漢字の字体の異同を考えることになる。

それから、字体と字種との区別から見た篆隷万象名義の重出字(李媛)。
同じ漢字とは何か、という観点。字書のデータベースを作って、同じ文字コード(ユニコード)になる字、という方向で「同じ字」(重複字)を定義していた。これに対して、私が質問したのは、「たとえば、IDSで同じ記述ができる文字を同じと認定することはできないか。さらには、同じ文字コードになる、同じIDSになるといっても、それだけで、同じ漢字が認定できないならば、何か超越的な観点を導入して、この文字とこの文字は同じである/ちがう、という判断をくだすことになるのではないか」と、言ってみた。

最後の仮名の字体について。階層構造としての仮名字体(石塚晴通)。
これは、発表というよりも、問題提起として理解しておいた方がいいだろう。漢字については、書体・字体・字形・字種、といった議論、あるいは、定義が可能である。では、仮名(平仮名・片仮名)については、どうであろうか。漢字と同じように、書体・字体というような階層構造の定義ができるであろうか。

この論点については、これから、私自身、いろいろと考えていかなければならない課題であると思っている。考えたこと、ある程度まとまりそうなら、順次、このブログでも書いていってみたいと思っている。

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