『日本の詩歌』大岡信2017-12-04

2017-12-04 當山日出夫(とうやまひでお)

大岡信.『日本の詩歌-その骨組みと素肌-』(岩波文庫).2017
(講談社.1995 岩波現代文庫.2005)
https://www.iwanami.co.jp/book/b325111.html

コレージュ・ド・フランスでの講義録(1994、1995)ということなのだが、そのあたりを割り引いて読む必要があるだろうか。たぶん、現代において、日本文学の分野で、和歌や歌謡の歴史を研究する立場からみるならば、いろいろと言いたいところがあるであろう。

だが、そうはいっても、日本の和歌、歌謡の歴史を、菅原道真の漢詩から始めて、紀貫之、和泉式部、それから、さかのぼって万葉集の笠女郎におよぶ。それから、梁塵秘抄から閑吟集にいたる歌謡を見る。このようにして、日本の和歌、歌謡の歴史を概観したこの本は、日本文学などを専攻する学生が、専門の論文を読む傍らに、副読本として見るには適当な本であると思う。その一方で、最新の和歌、歌謡の研究に目をくばるということが必要ではあるが。

私の勉強の範囲で、ちょっとだけ書いておくならば、最初の章に出てくる菅原道真の作品。そのなかで、庶民の困窮を歌った詩……これは、風諭詩というジャンルでとらえるべきもの、白楽天の作品の日本における受容の一つの表れとしてみるべきだろう。

蛇足を承知で書くと、今回の岩波文庫版の解説を、池澤夏樹が書いている。それを読んで……平安時代になって、女性が、五〇の平仮名をつくった、とあるのは、どうにもいただけない。日本文学、日本語史の、学部での概論的な講義の知識のレベルでみても問題がある。

道真の漢詩、それから、閑吟集の歌謡などをふくめて、日本の詩歌を概観したこの本は、読むに価するとは思う。これを見ながら、日本文学などの勉強で、さらに何を考えるかが、学生にとっては、課題となるにはちがいない。

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