『ウクライナ戦争と米中対立』峯村健司/幻冬舎新書2022-10-13

2022年10月13日 當山日出夫

ウクライナ戦争と米中対立

峯村健司.『ウクライナ戦争と米中対立-帝国主義に逆襲される世界-』(幻冬舎新書).幻冬舎.2022
https://www.gentosha.co.jp/book/b14583.html

峯村健司の対談集である。

対談の相手は次のとおり。

小泉悠
鈴木一人
村野将
小野田治
細谷雄一

どれもその分野での一流の人物と言っていいだろう。論調としては、リアルに国際政治と歴史の流れを見ているというべきである。これは、保守とか右翼とかにラベリングして分類すべきものではないと考える。

いろんな論点が論じられているのだが、基本的に、
・ウクライナ戦争
・ロシア
・アメリカ
・中国
そして、
・台湾有事

これらの現実の国際政治のなかで、今最も重要なテーマについて、縦横に論じてある。これを読んで感じるのは、まさに今の時代に生きる日本の問題、課題である。また、台湾有事ということが、単なる空想のことではないことがよく理解される。

これからの時代、二一世紀になって二〇年以上が経過した時点においてであるが、これからの国際社会の向かっていく方向が、必ずしも幸福なものではないことを、強く実感することになる。

覇権主義的世界、多極化する世界にあって、日本はこれからどうすべきか。直近の問題としては、台湾有事というときに、何を成しうるのか、いろいろと考えることが多い。今の世界では、民主主義国家の方がマイノリティになってしまっている、という指摘は重要かもしれない。うまく統治できて、経済的に繁栄することができるならば、独裁体制でもいいのではないか、そう思う国が増えてきていることは否定できないことだろう。

最も避けるべき議論……ロシアも悪いがウクライナも悪い。どっちもどっち。この論法で、台湾有事があったとして、中国も悪いがそれなりに理がある。軍事的にも強い。ならば、尖閣諸島ぐらいで我慢しておいて、日本が平和と中立を保つのが賢明……さて、このような論は、もうすでに水面下では浸透している考え方かもしれない。それこそ、中国の言論工作のねらいということになろう。

2022年9月30日記