『予定不調和』2010-05-06

2010-05-06 當山日出夫

『予定不調和』.長神風二.ディスカヴァー・トゥエンティワン.2010

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この本、前に書いた『科学との正しい付き合い方』とワンセットで読まないと、と思う。

『科学との正しい付き合い方』(内田麻理香)

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「予定不調和」、この本のメインのテーマは、(私の理解では)「トランス・サイエンス」である。「科学によって問うことはできるが、科学によって答えることのできない問題群からなる領域」、である。

この本はいろんなテーマについて触れている。
スマートドラッグ、遺伝子ドーピング、体細胞由来クローン、遺伝子組み換え食品、デザイナーベビー、ブレインマシンインターフェース、パワードスーツ

なかには、まだ、空想段階のものもあれば、すでに一部実用化されているものもある。それら、旧来の、人間社会の価値観に根底からかかわる問題に、では、どのようにしてとりくめばいいのか。著者は最後にこう述べる、

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現在進行形のことを、一つだけ取り出して「それだけ」を見るのではなく、一見関係ないような分野の進歩も含めて総合的にとらえたとき、何らかの解決策があるはなのだ。/そういう意味では、一章一章としてだけではなく、賞をつなげて読んで、考えていただければと思う。(p.270)

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また、こうも指摘する、

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人々が気味悪くなるような現実を突きつけるのは、確かに、科学が明らかにし、技術ができるようにしてしまう事柄だ。けれど、それは科学が技術の力がなければ覆い隠されていただけで、もともとある気味の悪さなのだ。(p.270)

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科学技術の進歩によって顕在化した問題は、もはや科学技術それ自体の内部では、人間社会の問題として対応しきれないところにきている。この観点からこそ、「科学リテラシ」が必要になるのであると考える。

また、これを裏返していえば、人文学的基礎教養の裏付けがなければ、新しい科学技術の提起する問題にも、対応できないということにもなるのであろう。それが、すぐに解決にむすびつくというものではない。人間社会のなかのひとつの文化のありかたとして、科学技術を考える視点の重要性である。

當山日出夫(とうやまひでお)