BSスペシャル「欲望の資本主義特別編 欲望の会社論2025〜あなたの組織は誰のもの?法人の謎〜」2025-08-01

2025年8月1日 當山日出夫

BSスペシャル 欲望の資本主義特別編 欲望の会社論2025〜あなたの組織は誰のもの?法人の謎〜

この番組は、もっと大胆に、岩井克人の独演会にしてしまった方がよかったかもしれない。

会社(株式会社)について、株主主権論という考え方があり、それに対する異論として、法人企業とはなにか、という側面から考えていくということになっていた。このあたりの論理の展開は、なるほどそうと理解できる。

その一方で、株主主権論があり、株式会社の最大の存在の目的は、株主に利益を得させるためである……という考え方が、今日において、大きな流れになってきているのは、なぜなのかということの、歴史的な説明があったもよかったと思う。流れとしては、フリードマン、ハイエク、というあたりに淵源を求めるということになっていたと思うのだが、そういう経済学者がいたということと、多くの人びとがそう考えるようになったということは、ちょっと違うかと思う。

フジテレビのことが大きくとりあげられていた。どの企業のことが話題であってもいいのだが、フジテレビについては、これが報道機関、メディアの企業である、ということを、やはり言っておくべきだっただろう。報道機関にとって、たしかに、ニュースは商品である。しかし、それは、八百屋さんがリンゴを売るのとは、ちょっと違う。形骸化した理想論かとも思うが、公正な報道とは何か、あるいは、報道機関の多様性がどのようにすれば確保できるのか、という視点は、欠かしてはならないと思っている。もうけにならなくても報道すべきニュースというものがあるだろう、と思うのである。

まあ、今の世論(輿論ではなく、佐藤卓己のいう)だと、フジテレビはろくでもない会社だから、つぶしてしまえばいい、という意見もあるのだが、気に食わない報道をする会社であっても、存続すべきであるということも、考えておくべきである。そうでなければ、輿論・公論(佐藤卓己のいう)の形成にはつながらない。(私の理解では、ということになるが。)

番組の中では出てきていなかったが、USスチールは、いったい何のためにある会社ということになるのだろうか。日本製鉄の子会社となったとしても、それは、日本製鉄の利益のためだけ、ということではないはずである。この買収が問題になったのは、アメリカの企業であり続けること、従業員の雇用の確保、経済安全保障ということであったはずである。ここで、株主主権論が言えるとすれば、どういう論理になるのだろうか。

資本主義と民主主義との関係は、これからどうなるだろうか。中国のような独裁的な国家の方が、経済もうまくいく、という言説が、世界のなかでは説得力を持ちはじめているかと思ったりもする。さて、これから、どう考えるべきだろうか。

人間の生き方の尺度として、収入ということはたしかにあるのだが、しかし、収入が多いほどいい、また、その価値観が優先的である(唯一とまではいわないにしても)というのは、どうなのだろうかと思うところがある。これが、資本主義社会の本質であるといえば、それまでなのかとも思ったりもするけれど。

2025年7月30日記

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