ドキュメント72時間「奥能登・珠洲 海辺の銭湯」2025-03-06

2025年3月6日 當山日出夫

ドキュメント72時間

こういう放送を見ると、たしかに感動的だなあ、と思う。そう思う人がいることは否定しないのだけれども、ここはちょっと冷静に考えてみたいこともある。

この銭湯は、地下水を使っている。だから、電気でモーターが動くなら水は大丈夫ということであり、水道代はかからないのだろう。また、燃料に薪をつかっている。この地域なら、山から薪の調達はできるだろうし、また、現在では、解体した家屋の廃材が利用できる。燃料代も安くあげることが可能、ということになるかもしれない。

全国で、銭湯か廃業するのは、利用者の減少、それから、維持コスト(水道代、燃料代の高騰)ということがあるかと思う。

珠洲市の場合、人口は減ったとしても、仮設住宅に一定数の人が住んでいて、その仮設住宅に風呂がなければ、ここに来ることになる。また、解体作業などの仕事をしている人たちの需要もある。

総合的に考えて、この銭湯の営業は継続しているということになる。また、続いてもらわなければ困るので、自治体としても、住民の利用料金を補助している。

この状態がいつまで続くことになるのか。そして、珠洲市の復興はどうなるのか、希望を持って語るべきなのか、あるいは、現実的な判断をせまられるのか、立場として別れるかもしれない。

珠洲市に解体の仕事としてやって来る人たちには、それぞれに、いろんな事情があってのことだろうと、推測することになる。想像すれば、いろいろと感動的な物語があることだろう。(この意味では、この回の放送は、見る人に感銘を与えるものになっている。)

番組のなかで何人か、移住して珠洲市に住民票を移したという人がいた。こういう人もいるにはちがいないが、一方で、やはりこの地域は、少子高齢化、過疎化、という大きな流れは止められない、また、震災や水害などで、その流れは加速している、このような現実は確かにあるとは思う。

珠洲市を地方における中核的なタウンとして、地域全体を、再整備する計画はあるにちがいないが(その中には、廃棄される村落もふくむ)……たぶん、県としては作っているはずだと思うが、具体的に提示できないでいるだけのことかもしれない。街を再整備するとなると、道路の整備が必要になり、周辺の土地の所有者の同意が必要になる。つまり、地権者がはっきりしている間に計画を作成し、手をつけなければ、その後の仕事はうまくいかないということになる。これが、もうどうしようもなくなるまで……人口が減少するにまかせたままで、それから動こうとしても遅い。はっきり言えば、土地の地権者が生きている間、つまり今、でなければならない。冷酷かもしれないが、これが現実だろう。

そして最後に思うこととしては、人間は生きていくために、気持ちのゆとり、ちょっとした贅沢、というものが必要である、ということである。生存に必要な衣食や住居があるだけでは、人間は生きていくことはできない。楽しく生きていかなければならない。そのために役立つことは、このような銭湯であるかもしれない。これは、残していかなければならないものである。

2025年3月1日記

コメント

_ awakak ― 2025-03-06 09時00分44秒

興味深くこの記事を見させていただきました。ありがとうございます。この銭湯の運営スタッフさんのX@amidayu_suzu ポストを見ると、3月末に珠洲市民の無料入浴の補填が終わり果たして500円の入浴料を払って珠洲市民の方が入浴に来て下さるか?また、設備の修繕の必要性もあり不安は拭えないそうです。このスタッフは北海道出身金沢美大卒で珠洲市に移住した方です。高齢の銭湯経営者から銭湯の将来のことを聞かされ運営に携わっています。移住する方もいますがそれ以上に人口流出が大きくこの銭湯の経営も大変だなあと感じます。この銭湯はボランティアの拠点でもありガスエビを食べていたのもボランティアの方々です。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2025/03/06/9759114/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。