『ARG』362号の感想:図書館の履歴問題2009-02-16

2009/02/16 當山日出夫

『ARG』の362号を読んでの感想をいささか。

図書館の閲覧履歴を、レファレンスサービスにつかうことの是非、である。

ARG
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090211/1234346362

読書ノートのつもり?なつれづれ日記
http://d.hatena.ne.jp/yoshim32/20090209/1234159904

はじめにことわっておかなばならないが、私は、『みんなの図書館』掲載論文の実物を読んでいない。ゆえに、誤認識があるかもしれない。(県立の図書情報館まで、片道、自動車で30分ほどなのであるが。)

しかし、だからといって、発言してはいけない、ということはないだろう。
以下、あくまでも私見。

まず、本の閲覧記録を残す=その本人の実名、と考えるのは短絡ではないか。属性情報の中心にあるのは、「本」である。「この本を見た人は、他にこのような本も見ています」、つまり、「本→本」への情報である。これを結びつけるキーとして、利用者という「ひと」が存在する。これは、単に、利用者IDで十分である。

個々の利用者のIDと、その登録時の個人情報が、同じシステムの中になければならない必然性はない。
(1)利用者(個人)の閲覧履歴の記録
(2)その本がどのように閲覧されてきたかの記録
これは、別次元のことであろう。また、システムとしても、別のものとして構築可能であるはず。

(1)は、個々の図書館ごとに、内部的に閉じた記録。しかし、(2)は、ある本を媒介として、各種の図書館が連携しうる。そして、このレベルまで、情報を上げたとき、もはや、個人情報など消えてなくなる(不要である)。キーになるのは「本」であって、「ひと」ではない。

ところで、もし、本当に、図書館利用者の閲覧の秘密ということを言い出すのであれば、開架図書など、絶対にあってはならないはずだ。誰が、どの分野の本棚を見ているのか、たまたまその近くにいた人に、すぐ分かってしまうではないか。図書館における閲覧の秘密ということを考えるならば、ここまで行き着く。

當山日出夫(とうやまひでお)