奈良国立博物館『春日大社のすべて』に行ってきた2018-05-19

2018-05-19 當山日出夫(とうやまひでお)

春日大社のすべて

ちょっとついでもあったので、奈良国立博物館に行ってきた。『春日大社のすべて』の展示を見るためである。創建1250年記念特別展、である。

春日大社の博物館での展示といえば、すこし前に、東京国立博物館でもあった。これも、たまたま東京に行く用事のあった時だったので、行ってきた。その時のことを思い出してみるのだが、それぞれに特徴のある展覧会になっていると思う。

言うまでもないことかもしれないが、奈良国立博物館は、春日大社のすぐ近くにある。今回の展示でも、春日大社の宝物のいくつかが展示されていた。ただ、私は、文字が書いてあるもの……典籍、古文書などになるが……にしか、基本的に興味がない。というよりも、見て分からない。

そうはいっても、今回の奈良国立博物館で興味深かった点をあげると、次の三点ぐらいだろうか。

第一に、春日大社それ自身で持っている、伝来してきている宝物の多いことである。これと比べてみるのは、伊勢神宮なのだが、伊勢神宮に行っても、古代・中世から伝来してきているという宝物を見ることは、ほとんど無いようだ。これは、持っていても見せないだけのことなのか、あるいは、そんなに数多くのものが伝来してきていないのか、どうなのだろう。

かなり以前に、神宮徴古館に行ったことはあるのだが、はて、どうだったであろうか。近年では、せんぐう館にも行った。こちらは、宝物というよりも、式年遷宮にまつわる品々の展示である。

第二に、今の春日大社の地に神社が造営される以前、その土地において行われていた祭祀の遺跡・遺物などの展示があったこと。これは、面白いと思った。春日大社は、今年で、創建1250年になる。が、その創建の前から、何かしら霊的な土地として、人びとの信仰の場所であったのであろう。

第三に、やはり中世以降の神仏習合にまつわる文化財の数々。春日大社の信仰も、興福寺をふくめて、仏教とのかかわりを考えることになる。いや、神仏習合の状態だったからこそ、多くの宝物が伝来してきており、現代にいたるまで信仰の流れがある、と見るべきなのであろう。

以上の三点が、展示を見て感じたことなどである。

総合して感じるところは、以前に見た東京国立博物館での展覧会の時よりも、今回の奈良国立博物館の展覧会の方が、規模こそ小さいかもしれないが、古代から中世にかけての春日大社の信仰のひろがり、淵源、とでもいうべきものを、よく示していたのではないだろうか。

なお、展示品の中で特に興味深かったのは、弓。『伊勢物語』に出てくる歌。「梓弓 ま弓つき弓 年を経て わがせしがごと うるはしみせよ」。この歌に歌われている「あづさ弓」「つき弓」の実物があった。この歌について、というよりも、この歌をふくむ『伊勢物語』第二十四段については、毎年の日本語史の講義で触れることにしている。文字社会の成立という話題のときに、この段について話す。(何故、女性は最後に歌を血で書き付けて死んだのだろうか。)

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