『坂の上の雲』「(3)青雲(前編)」 ― 2024-09-27
2024年9月27日 當山日出夫
坂の上の雲 (3)青雲(前編)
このNHKのドラマは、原作の司馬遼太郎の『坂の上の雲』をほとんど跡形もとどめないほど改変、加筆してある。共通するのは、秋山好古、真之の兄弟、正岡子規が主な登場人物であること、日清、日露の戦争を描いたこと、ぐらいであると言っても過言ではないかもしれない。しかし、見ていると、まごうかたなく司馬遼太郎の描きたかった明治という時代は、こういうものだったのだろう、という気持ちになる。この意味では、このドラマの脚本はすごいとしかいいようがない。(もちろん、ドラマそれ自体として面白いということもある。)
見ながら思ったことを書いてみる。
娘義太夫というのは、名前としては知っていたことであるが、実際には見たことはない。昔、東京に住んでいたころは、国立劇場(小劇場)の文楽公演は、ほとんど見ていたので、浄瑠璃という芸能については、ある程度なじみがある。しかし、単独での義太夫の公演は、ほとんど接していない(と憶えている)。ドラマを見ながら、あんなものだったのだろうか、と思う。それに、その当時の若い人たちが熱狂したのも、まあ、なるほどという感じでである。この時代なら、講釈師なども登場してきてもいいのだろうが、やはりテレビの映像にするとなると、娘義太夫になるのだろう。
夏目漱石が登場してきている。どうも、夏目漱石の若いころのイメージとはそぐわないような気がするのだが、どうだろうか。といって、私がイメージする夏目漱石は、特にその小説……『吾輩は猫である』からはじまって『明暗』にいたるまで……を書いた作家としての漱石、ということになる。
数学の試験のとき、正岡子規は、数学が分からないより前に、問題文の意味が分からないとぼやいていた。出題は、英語で問題文が板書してあった。これは、まさに今の学校教育で起こっていることでもある。まず、日本語の問題文の意味が分からない子どもが多い、ということは指摘されているところである。
陸軍大学校で、メッケルの講義があった。専門的な軍事用語は使わないというシナリオの方針なのだろうが、今なら、もっと軍事の理論についての話しを聞きたいという気がする。それから、ロジスティクスについて、どのように考えていたのか気になるところである。日清、日露の戦争はかろうじて勝てた(少なくとも負けはしなかった)ことになるが、その後の日本軍の兵站のことを考えると、このあたりのことをどう考えていたのか、学んでいたのか、と思うところがある。
東京から江の島なら、なんとか歩いて行けない距離ではない。バンカラ(ということばが、この時代にあったかどうかは別にして)な学生なら、徒歩旅行を敢行してもおかしくはないだろう。ただ、ドラマでは、行きは描いていたが、帰りも歩かないといけないはずである。疲れ果ててお金もなくて、どうやって帰ってきたのだろうという気にはなる。
このドラマでは、幾人かの女性が魅力的である。正岡子規の妹の律、佐久間のおひいさまの多美、とても美しく描かれている。これから出てくる人物としては、真之の妻になる女性、それから、広瀬武夫の恋人のロシア人女性がいる。
2024年9月26日記
坂の上の雲 (3)青雲(前編)
このNHKのドラマは、原作の司馬遼太郎の『坂の上の雲』をほとんど跡形もとどめないほど改変、加筆してある。共通するのは、秋山好古、真之の兄弟、正岡子規が主な登場人物であること、日清、日露の戦争を描いたこと、ぐらいであると言っても過言ではないかもしれない。しかし、見ていると、まごうかたなく司馬遼太郎の描きたかった明治という時代は、こういうものだったのだろう、という気持ちになる。この意味では、このドラマの脚本はすごいとしかいいようがない。(もちろん、ドラマそれ自体として面白いということもある。)
見ながら思ったことを書いてみる。
娘義太夫というのは、名前としては知っていたことであるが、実際には見たことはない。昔、東京に住んでいたころは、国立劇場(小劇場)の文楽公演は、ほとんど見ていたので、浄瑠璃という芸能については、ある程度なじみがある。しかし、単独での義太夫の公演は、ほとんど接していない(と憶えている)。ドラマを見ながら、あんなものだったのだろうか、と思う。それに、その当時の若い人たちが熱狂したのも、まあ、なるほどという感じでである。この時代なら、講釈師なども登場してきてもいいのだろうが、やはりテレビの映像にするとなると、娘義太夫になるのだろう。
夏目漱石が登場してきている。どうも、夏目漱石の若いころのイメージとはそぐわないような気がするのだが、どうだろうか。といって、私がイメージする夏目漱石は、特にその小説……『吾輩は猫である』からはじまって『明暗』にいたるまで……を書いた作家としての漱石、ということになる。
数学の試験のとき、正岡子規は、数学が分からないより前に、問題文の意味が分からないとぼやいていた。出題は、英語で問題文が板書してあった。これは、まさに今の学校教育で起こっていることでもある。まず、日本語の問題文の意味が分からない子どもが多い、ということは指摘されているところである。
陸軍大学校で、メッケルの講義があった。専門的な軍事用語は使わないというシナリオの方針なのだろうが、今なら、もっと軍事の理論についての話しを聞きたいという気がする。それから、ロジスティクスについて、どのように考えていたのか気になるところである。日清、日露の戦争はかろうじて勝てた(少なくとも負けはしなかった)ことになるが、その後の日本軍の兵站のことを考えると、このあたりのことをどう考えていたのか、学んでいたのか、と思うところがある。
東京から江の島なら、なんとか歩いて行けない距離ではない。バンカラ(ということばが、この時代にあったかどうかは別にして)な学生なら、徒歩旅行を敢行してもおかしくはないだろう。ただ、ドラマでは、行きは描いていたが、帰りも歩かないといけないはずである。疲れ果ててお金もなくて、どうやって帰ってきたのだろうという気にはなる。
このドラマでは、幾人かの女性が魅力的である。正岡子規の妹の律、佐久間のおひいさまの多美、とても美しく描かれている。これから出てくる人物としては、真之の妻になる女性、それから、広瀬武夫の恋人のロシア人女性がいる。
2024年9月26日記
「調査報道 新世紀 File5 ミャンマー軍を支える巨大な闇」 ― 2024-09-27
2024年9月27日 當山日出夫
NHKスペシャル 調査報道 新世紀 File5 ミャンマー軍を支える巨大な闇
ミャンマーのことについては、ときどきニュースになるが、主に民主派勢力のことが多い。そのなかで、この番組では、政府の方に焦点をあてて、その活動の一端を明らかにして報じた、ということになる。
政府軍が使用している戦闘機が、ロシア、中国のものであり、その燃料が、中国からもたらされているということなのだが、はっきりいって、特にこれで驚くということはない。たぶん、そうなんだろうなあ、と思っていることである。
しかし、船の航路、港湾設備、輸送のトラックなどの地道な調査から、その輸入のルートを明らかにしたということは、まさに、調査報道ということになる。
日本のODAが、結果的には、軍事政権を利することになっている。これも、たしかにそのとおりだとは思うが、ミャンマーになんらかの財政的支援をおこなって、それがまったく軍事政権と無関係に、純然たる民生用に使われるとは、思いにくい。それが、橋の建設というような重要な社会インフラであるならば、政府と企業との癒着を想像するなという方が無理だろう。だが、これも、このことの実態の一端を明らかにしたという意味では、価値のある報道である。
ただ、この番組のなかで、いわゆるロヒンギャ問題ということにまったく言及することがなかったのは、意図的にそう作ったということなのだと思う。
2024年9月24日記
NHKスペシャル 調査報道 新世紀 File5 ミャンマー軍を支える巨大な闇
ミャンマーのことについては、ときどきニュースになるが、主に民主派勢力のことが多い。そのなかで、この番組では、政府の方に焦点をあてて、その活動の一端を明らかにして報じた、ということになる。
政府軍が使用している戦闘機が、ロシア、中国のものであり、その燃料が、中国からもたらされているということなのだが、はっきりいって、特にこれで驚くということはない。たぶん、そうなんだろうなあ、と思っていることである。
しかし、船の航路、港湾設備、輸送のトラックなどの地道な調査から、その輸入のルートを明らかにしたということは、まさに、調査報道ということになる。
日本のODAが、結果的には、軍事政権を利することになっている。これも、たしかにそのとおりだとは思うが、ミャンマーになんらかの財政的支援をおこなって、それがまったく軍事政権と無関係に、純然たる民生用に使われるとは、思いにくい。それが、橋の建設というような重要な社会インフラであるならば、政府と企業との癒着を想像するなという方が無理だろう。だが、これも、このことの実態の一端を明らかにしたという意味では、価値のある報道である。
ただ、この番組のなかで、いわゆるロヒンギャ問題ということにまったく言及することがなかったのは、意図的にそう作ったということなのだと思う。
2024年9月24日記
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