新日本風土記「北へ南へ 駅物語」2025-08-01

2025年8月1日 當山日出夫

新日本風土記 「北へ南へ 駅物語」

鉄道とか駅とか、どうして、人びとの郷愁をさそうのだろうか。世の中には鉄道好きの人が多い。(私は、その趣味はまったくないけれど。)

もう覚えている人は少ないと思うが、NHKの朝ドラの昔昔の作品に『旅路』というのがあった。北海道の鉄道員の家族の物語である。主演は、日色ともゑ、横内正。このようなドラマが作られた時代、それは、まだJRが国鉄であったころのことになるが、鉄道員というのは、社会的に責務のある仕事だった。決して、地位が高いとはいえないけれど、やりがいのある仕事の一つであったことになる。

ちなみに、このドラマのシーンで最も印象的に覚えているのが、主人公夫婦が幼いころに育てが少女が大きくなって、実は自分はその少女だったのですということを知らせるために、葉書を置いていく場面。別れなければならなかったときに、何かあったら、これに書いて投函するのだと渡された葉書を、その後、ずっと大事に持っていた。私の記憶している範囲で、この葉書のシーンが、歴代の朝ドラで見たうちになかでも、もっとも強く印象に残っている。

やはり鉄道というのは、近代になってからの日本を象徴するものなのだろう。鉄道がやってきたということで、日本の各地は大きく変わった。人びとの意識、社会のあり方、そして歴史をも変えてきたといっていいだろう。

映っていたのは、ローカル線が多かった。地方に住む人にとって、その土地の近代になってからの歴史と生活は、鉄道なしには語ることができない。

『砂の器』は、若い時に映画館で見た。今にいたるまで評価の高い映画であることは知っているのだが、私は、見たときにはあまりいいとは思わなかった。印象的に覚えているのは、年老いた父親がいるハンセン病の療養所のとき映った、瀬戸内海の海と島の映像である。風光明媚ではあるが、世間とは隔絶したところに、隔離された生活をおくることになったことを、象徴的に、しかし、美しく表現していた。

亀嵩……このことばは、ATOKで、「かめだけ」で変換してくれる……という駅のことは、『砂の器』で知った。原作の小説の方を先に読んでいる。だから、ミステリとして、殺人のトリックを大幅にカットした脚本は、すこし違和感があったことになるが。

『点と線』も読んだ。中学生ぐらいか、高校生ぐらいのときだっただろうか。東京駅での、4分間の空白、は見事な時刻表トリックだと思う。また、この作品のなかで、福岡の刑事が、心中事件とおぼしい事件に疑問をもったきっかけが、食堂車の、お一人さま、の領収書であった。語誌を調べてみようと思ったわけではないが、今の時代に「おひとりさま」という言い方がよくされるようになったのは、おそらく、『点と線』がきっかけではないかと推測する。(探せば、論文に書いた人がいるかとも思うけれど。)

地方のローカル鉄道の駅は、無人駅になるか、あるいは、駅が他の業務を兼業するのでなければやっていけないということかとも思う。兼業は悪いことではないと思う。

どうでもいいことだが、見ていて、井上二郎アナウンサーが「したづつみ」と言っていた。今では「したつづみ」が普通になっていることばである。

2025年7月29日記

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