「山女」2022-10-22

2022年10月22日 當山日出夫

NHK 山女
https://www.nhk.jp/p/ts/DMWQ2RYQ7G/

一〇月一七日の放送。録画しておいて、後日にゆっくりと見た。

以前にも書いたことがあると思うのだが、私は、『遠野物語』を全部読んだことがない。また、これを使ってある『共同幻想論』もきちんとは読んでいない。理由は、読んで怖いからである。これは、なんの誇張もない。ただ、「遠野物語」の文章を読むと、全身に恐怖を感じる。まさに、これこそ、ある意味での「文学」のちからだと強く思うところがある。いや、「文学」というとあまりに洗練されすぎてしまうかもしれない。それ以前に持っている、ことばのちからである。そして、その背景にある、その時代の、その土地の、人びとの生き方である。

この作品は、「遠野物語」に題材を撮っての映像化ということなのだが、このように映像化したものなら、今の時代において、ついていける。というよりも、今の時代に「遠野物語」を映像化すると、このような形になるのかと、なんとなく納得してしまう部分もある。

とはいえ、ちょっと批判的に見てみるならば、前近代の村落共同体というものの描き方が、あまりにステレオタイプという気がしないではない。(見ていて、なんとなく白土三平の「カムイ伝」のことを思ってしまった。)

映像作品としては、一級の出来であるとおもう。監督は、福永壮志。おさえた色調、きりつめた台詞、映像だけで語りかけてくる魅力がこの作品にはある。

2022年10月21日記