『光る君へ』「旅立ち」2024-05-27

2024年5月27日 當山日出夫

『光る君へ』第21回「旅立ち」

伊藤敏恵アナウンサーの声で言われると、本当に『枕草子』がそんなふうにして成立したものだと思ってしまう。まあ、まったくの虚構ということではないのだが、実際の成立の事情については、分かっていないというのが正しいということだろうと思うのだが。

ドラマとしては、「春はあけぼの」から始まる形で『枕草子』が書かれたというのが素直なはこびかと感じるところがある。確かに、「春はあけぼの」という文言は人口に膾炙しているし、同時に、いかにも『枕草子』という季節の美意識を表している。(おそらくは、このような季節感は、平安時代の王朝貴族にとっても斬新なものだっただろう。一般に、王朝貴族の季節感を表したものとしては、『古今和歌集』からの勅撰和歌集、『和漢朗詠集』などを見ることになると思っている。)

『枕草子』の成立論、また、当時の文章の書写のあり方、というようなことを考えると、紙の一枚一枚に、あのように書いていったものかどうか、というあたりのことは、疑ってみるのが妥当かなとは思ったところである。それを、どのように編集して、現在に伝わっているような形態の冊子本になったのか、このプロセスをめぐってはいろいろと考えることになる。

表記史の観点から見るならば、(ちょっと専門的な議論になるが)平安時代の仮名文において、散らし書きにセグメンテーションの機能を持たせるということは、どうなのかと思う。また、漢字も多いように思える。漢字仮名交じり文が成立するのは、もう少し後のことになるはずである。

清少納言と紫式部が、仲よく語らっているというような場面は、普通に日本文学を勉強している人間には、ちょっと想像しづらいというのが、一般的な感覚かなとは思っている。これも、今の大学生ぐらいが見ると、このようなことがあったものだと思いこんでしまうかもしれない。ドラマでイメージが定着するというと、代表的なのは、炎につつまれる本能寺で自決する信長……であるかもしれない。これは、かつて『太閤記』で描いたものである。

また、平安時代、宋との交易が行われていたことは、歴史的には常識的なことがらであるし、いわゆる唐物として、中国製からの輸入品が珍重されたことは確かである。

どうでもいいことかと思うが、ドラマの役として、オウムの声、というのは始めて見た。

2024年5月26日記

「砂漠のクジラ 進化のミステリー」2024-05-27

2024年5月27日 當山日出夫

フロンティア 砂漠のクジラ 進化のミステリー

クジラがカバに近いということは、以前なにかの折りに知ったかと憶えている。

進化の問題として興味があるのは、一度、地上に出た生きものが、どうしてまた海にもどることになったのか、ということなのだが、ここのところについての説明はなかった。いったいどうして、クジラとかアザラシとかジュゴンとか、海で生活するようになったのだろう。ペンギンがなぜ海にもぐるようになったのかも、どうしてなのだろうと思う。

ともあれ、クジラの祖先の化石がエジプトの砂漠から見つかるということは、とても面白い。ここも昔は海だったということなら、そうかもしれないが、他の地域では見つかっていないらしいのだが、これもどうしてなのだろう。

クジラの進化については、謎が多いということである。現在のクジラにどうやって進化してきたのか、それを説明するには、欠けている部分がたくさんある。

ところで、番組の内容とは関係ないが、見ていて気になったことがある。エジプトはイスラムの国だが、発掘にあたる研究者には女性の姿がある。これは、エジプトの開明性(といっていいだろうか)ということになるのだろう。

砂漠の真ん中に化石が露出した状態で置いてあった。特にドロボーする人もいないのだろうが、こういう保存で大丈夫なのかとも思う。これもその国ならでは事情があってのことかもしれない。

それから、登場していた麻布大学のいのちの博物館。骨格標本が多くある。調べてみると、神奈川県にある。横浜線の沿線になる。もうそのような機会はないかもしれないが、国立国語研究所に行くような用事でもあれば、たちよってみたいと思う。

また、アメリカのスミソニアン博物館のバックヤードが映っていた。たぶんこれまでにテレビで、スミソニアン博物館のバックヤードを見たことはないと思う。さすがにすごいと思った。

2024年5月17日記