『戦争と平和』(三)トルストイ/岩波文庫2020-05-14

2020-05-14 當山日出夫(とうやまひでお)

戦争と平和(3)

トルストイ.藤沼貴(訳).『戦争と平和』(三)(岩波文庫).岩波書店.2006
https://www.iwanami.co.jp/book/b248228.html

続きである。
やまもも書斎記 2020年4月25日
『戦争と平和』(二)トルスト/岩波文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/04/25/9238990

この三冊目には、第二部のうち、三・四・五編をおさめてある。以前に第二冊目を読んでから、ちょっと時間がたってしまった。二冊目を読んだのは、まだ世の中が平穏な時期であった。その後、続けて読もうと思いながら、いろいろとりまぎれて手を出さないでいた。だが、これもここしばらくは、世の中こんなもんだろうと開き直って考えるようになってきて、ようやく第三冊目を読み終えた。

岩波文庫は、各冊ごとに、それまでのあらすじと主な登場人物の紹介がついているので、多少時間をおいて読んでもなんとかついていける気がする。(だが、これも、やはり読むときには一気に読んでしまった方がいいだろう。続けて第四冊目以降を読むつもりでいる。)

三冊目を読んで印象にのこるのは、なんといってもナターシャである。おそらくトルストイが描いた女性のなかでも、特筆すべき魅力にあふれている。たまたまそうなのかもしれないが、文庫本の三冊目は、このナターシャが主人公とでもいうような印象をうける。

どうして、ロシア文学に出てくる女性はこうも魅力的なのだろうか。こんなことを思ってみる。同じトルストイのアンナ・カレーニナもそうであるし、また、ドストエフスキーの『罪と罰』に出てくるソーニャも魅力的である。それから、昔読んだ作品では、短篇だが、ツルゲーネフの作品に出てくる女性に、若いときはこころひかれたものである。

ダンス・パーティのシーン、それから、劇場でのシーンなど……トルストイは、ナターシャの魅力をひきたてる舞台を入念に描いている。文庫本のコラムによると、この劇場のシーンは、実際の史実とはちがっているらしい。一九世紀初頭のロシア貴族の生活を活写するために、ここは意図的に、史実とは違う舞台設定になっているとのことである。

この三冊目には、戦闘場面は出てこない。また、歴史について、トルストイが延々と述べるところもない。ただ、ナターシャ、それから、ソーニャといった女性の登場人物が、生き生きと描かれている。このような壮大な小説において、人物造形が確かに描き出されているところは、まさに、トルストイの天才……芸術家としての……であると感じるところがある。

印象に残ることとしては、狩猟のシーンがある。これなどふくめて、ロシア貴族の生活のさまざま、その経済のやりくりは実は大変だったらしいのだが、これらが実に興味深く描かれている。

この冊は、まさにナターシャという魅力的な女性を描いた一冊であるという読後感である。つづけて、第四冊目を読むことにしようと思う。

2020年5月4日記

追記 2020-05-15
この続きは、
やまもも書斎記 2020年5月15日
『戦争と平和』(四)トルストイ/岩波文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/05/15/9246826

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