NHK「犬神家の一族」(前編)2023-04-27

2023年4月27日 當山日出夫

NHK「犬神家の一族」

若いときに、横溝正史の原作は読んでいる。最近も読みかえしたところである。(NHKがこのドラマを作るというので、横溝正史の作品をいくつか読みかえしてみた。ただ、読んで思ったことは文章に書いてはみたが、まだアップロードはしていない。テレビの放送の方が先になってしまった。)

つい最近読みなおしたばかりの作品なのに、すっかり忘れてしまっている……というのが、正直なところ。まあ、この作品の場合、原作の小説と映像作品とは別物と思って見た方がいいのだろうと思う。

映画版、市川崑監督作品は、見ていない。私が学生のころだったろうか。話題になったのは知っていたのだが、角川の映画を見る気にはなれなかった。(岩波ホールには、毎月のように通っていたのだったが。)

「犬神家の一族」は、原作の小説よりも、むしろ映画の方が有名であるかもしれない。そして、市川崑の作品は、日本映画の歴史の中でも傑作の一つに数えられる作品であることは知っている。映画を見ていなくても、いくつかの場面は、あまりにも有名であると言っていいだろう。

ところで、NHKのドラマ版であるが、これはこれとしてよく出来ていたと思う。演出は、吉田照幸。(今、朝の時間に、「あまちゃん」を再放送でやっているが、この演出も手がけていることに気づいた。)

市川崑の映画を見ていないのでなんともいえないのだが、たぶん、かなり映画を意識して作ったと思うところがある。これは、やはり、いたしかたないことだろう。

だが、テレビの画面で見る作品としては、これとして非常に面白い。脚本もいい。

前半を見たところで思うことがいくつかある。

「犬神」という苗字を、松子たちは名乗ることが無かったとあった。終わりの方で、松子が金田一に、そう語っていた。たしか、このような記載は、原作の小説には出てきていないと憶えている。(さて、どうだろうか、確認のため原作を再度読みなおして見る元気はない。)

犬神の家の家系は複雑である。この原作の発表された当時において、戸籍上はどのようになっていたのだろうか。また、法律的に正当な権利としての相続権は、どのようになっていたのか。さらには、戦争で生死不明となっている場合の、法的にはどのように扱われていたのだろうか。これも、今日の観点から考えてみると、いろいろと謎につつまれた作品である。(NHKの番組HPを見ると、「犬神松子」と書いてあるが、これは、脚本と齟齬があることになる。)

NHKドラマは、犬神翁のことがさほど出てきていない。少なくとも前編を見るかぎりでは、珠世がどのような素性の女性であるかはっきりしない。ただ、恩人の縁故者ということである。このあたりは、後編で説明があるということでいいのだろうか。

小説は小説として、ドラマはドラマとして楽しんで見ればいいと思う。後編を楽しみに見ることにしよう。

2023年4月23日記