『ひよっこ』あれこれ「運命の人」2017-07-30

2017-07-30 當山日出夫(とうやまひでお)

ひよっこ
http://www.nhk.or.jp/hiyokko/

第17週、「運命の人」
http://www.nhk.or.jp/hiyokko/story/17/

この週は、大事件が二つもあった。

第一は、みね子の失恋である。

慶應の大学生・島谷は、みね子に自分の気持ちをうちあける。家族を捨てるという。しかし、それに対して、みね子はこのように言う……あなたは貧乏がどんなものかわかっていない。貧乏はつらい。家族を捨てるような親不孝な人はきらいです、と。

これは、みね子の気持ちの率直なあらわれだろう。父親が失踪して、東京で働くということになったみね子にとって、家族とはとても大事なものである。その家族を捨てようとするする島谷と一緒になることはできない。

ここでは、島谷への思いと同時に、みね子の家族を思う気持ちが表現されていた。

バー「月時計」のシーン。さりげなく、その二人の話をきいている、店主・邦子の対応が、情感にあふれていてよかった。閉店になって、外の看板のライトを消しても、二人が、そしてみね子が最後までいられるようにという心配りが、見るものにつたわってくる。この邦子の存在が、島谷との別れのシーンを、なんとか救いのあるものにしていたと見てよいのではないか。

第二は、最後、土曜日になって……父親の発見になった。どうやら、記憶喪失になって、女優・川本世津子のもとに身をよせていたらしい。そのあたりの詳しい事情は、まだ不明だが、次週以降、明らかになっていくのであろう。

この二つの大きな事件をはさんで、途中、愛子が、あかね荘にやってきたりして、なごむ場面があった。この二つの大事件と、その間の、ほんわかしたエピソード……みね子のテレビCM出演など……と、このあたりの緩急のつけかたが、このドラマの脚本のいいところである。

ともあれ、週の初めで、島谷と別れるときにみね子の心にあったのは、家族を思う気持ちである。そして、週の最後になって、失踪していた父親との再会ということになった。この展開は、とてもうまいと思う。

このドラマ、失踪していた父親との再会で終わりになるのかと思って見ていたが、そうではないようだ。記憶喪失になった父親と、新たに家族を再構築していく物語が、これからはじまることになる。また、失恋したみね子に新しい相手は現れるのだろうか。このあたりが、これからのドラマの軸になっていくのであろう。

悪い人が出てこないということがこのドラマについてはいわれているようだが、しかし、父の失踪、そして、記憶喪失という、このうえない理不尽を、ごく普通の女の子であるはずのみね子は背負って生きていくことになる。この理不尽を、このドラマは描こうとしているのだと思う。

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