『楡家の人びと 第三部』北杜夫 ― 2021-10-04
2021-10-04 當山日出夫(とうやまひでお)
北杜夫.『楡家の人びと 第三部』(新潮文庫).新潮社.2011(新潮社.1964)
https://www.shinchosha.co.jp/book/113159/
続きである。
やまもも書斎記 2021年9月27日
『楡家の人びと 第二部』北杜夫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/09/27/9427366
第三部まで読んだ。ここでは、主に戦時中(太平洋戦争)が舞台になる。この作品を、数年ぶりに再読してみて思うこととしては、次の二点ぐらいだろうか。
第一には、死である。
以前に『楡家の人びと』を読んだときには、さほど感じなかったのだが、この小説は、「老い」と「死」の小説でもある。たしかに、何人かの登場人物は、作中で亡くなる。また、時の経過とともに年老いていく。そこで、それぞれの「老い」の姿がしみじみと描かれることになる。
また、太平洋戦争の戦争や空襲の場面では、日常的に「死」と隣り合わせにある。
そして、「死」と「老い」の視点から描写される、季節の風物のなんと抒情的なことかと感じることになる。
第二には、時代である。
第一部では大正時代、第二部では昭和の初期、第三部では太平洋戦争と、それぞれの時代が描かれる。この小説を読んで、まさに近代の日本の歴史の流れを描いていると、強く共感するところがある。いや、あるいは逆かもしれない。このような小説があることによって、近代の日本の時代のイメージが、文学的に読者のなかに形成されていくことになるのだろう。
ともあれ、日本の近代ということを考えるうえで、最も重要な位置にある小説の一つであるとはいっていいだろう。
以上の二点ぐらいのことを、思って見る。
が、何よりも、この小説は面白い。これにつきるかもしれない。市井の人びと……といっても、その多くはちょっと変わっているのだが……を登場人物として、大正から昭和戦前までの時代を主な背景として、まさに日本のある時代を描いている。そして、ユーモア、ヒューマニズム、叙情性、これらがないまざって、一つの小説世界を構築している。
もし可能ならば、時間をおいて、さらに読みかえしてみたい作品の一つである。また、北杜夫の作品のいくつかは、いまでも文庫本などで読めるものがある。これらについても、読んでおきたい……多くは若いときに読んでいるので再読ということになるが……年をとってから、どのように感じるか、読みなおしてみたいと思っている。
2021年9月8日記
https://www.shinchosha.co.jp/book/113159/
続きである。
やまもも書斎記 2021年9月27日
『楡家の人びと 第二部』北杜夫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/09/27/9427366
第三部まで読んだ。ここでは、主に戦時中(太平洋戦争)が舞台になる。この作品を、数年ぶりに再読してみて思うこととしては、次の二点ぐらいだろうか。
第一には、死である。
以前に『楡家の人びと』を読んだときには、さほど感じなかったのだが、この小説は、「老い」と「死」の小説でもある。たしかに、何人かの登場人物は、作中で亡くなる。また、時の経過とともに年老いていく。そこで、それぞれの「老い」の姿がしみじみと描かれることになる。
また、太平洋戦争の戦争や空襲の場面では、日常的に「死」と隣り合わせにある。
そして、「死」と「老い」の視点から描写される、季節の風物のなんと抒情的なことかと感じることになる。
第二には、時代である。
第一部では大正時代、第二部では昭和の初期、第三部では太平洋戦争と、それぞれの時代が描かれる。この小説を読んで、まさに近代の日本の歴史の流れを描いていると、強く共感するところがある。いや、あるいは逆かもしれない。このような小説があることによって、近代の日本の時代のイメージが、文学的に読者のなかに形成されていくことになるのだろう。
ともあれ、日本の近代ということを考えるうえで、最も重要な位置にある小説の一つであるとはいっていいだろう。
以上の二点ぐらいのことを、思って見る。
が、何よりも、この小説は面白い。これにつきるかもしれない。市井の人びと……といっても、その多くはちょっと変わっているのだが……を登場人物として、大正から昭和戦前までの時代を主な背景として、まさに日本のある時代を描いている。そして、ユーモア、ヒューマニズム、叙情性、これらがないまざって、一つの小説世界を構築している。
もし可能ならば、時間をおいて、さらに読みかえしてみたい作品の一つである。また、北杜夫の作品のいくつかは、いまでも文庫本などで読めるものがある。これらについても、読んでおきたい……多くは若いときに読んでいるので再読ということになるが……年をとってから、どのように感じるか、読みなおしてみたいと思っている。
2021年9月8日記
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2021/10/04/9429290/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。