NHKスペシャル「臨界世界 月の町タルトンネ ソウル最後のスラム」 ― 2026-04-28
2026年4月28日 當山日出夫
NHKスペシャル「臨界世界 月の町タルトンネ ソウル最後のスラム」
韓国が非常な格差社会であり、社会からドロップアウトした人のふきだまりとしてスラムがあってもおかしくはないのだが、現実のそこの生活を描いた番組というのは、これまでになかったかもしれない。この番組の場合は、そのスラムに住む人びとの生活であると同時に、そこを立ち退かされる、退去せざるをえない現状についてのものでもある。
韓国社会の陰の面については、あまり日本で大きく報じられることはない。えてして、(自称)リベラル左翼という立場からは、成熟した民主主義の国で、日本よりずっといい、というイメージで語られることが多い。(しかし、最近の話題でいえば、韓国の重要な産業として武器輸出があることについては、言及することはない。都合の悪いことは見えなくなるということである。)
富裕層向けの高級マンションを建設するために、社会の最底辺にいるスラムの人びとの生活を破壊する……これは、やっぱり見ていてどうかなあ、と思うところである。
ここを出ていった人たちは、いったいどういう生活をしているのだろうか。その後の追跡取材とかはあるのだろうか。まずは、住むところの確保であり、それから、就労支援ということになる。それでもダメなら、日本流にいえば生活保護ということになるのだろう。(韓国のこういう人たちへの公的な支援や福祉の制度はどうなっているのか、このところの解説もほしい。)
見ていて興味深かったことは、廃品回収で生計をたてている高齢の男性が、これまで地下鉄に乗ったことがない、と言っていたことである。ソウルに住みながら地下鉄に乗らずに生活できてきたということは、かなり以前から、普通の市民(?)としての生活を放擲してきたということでいいだろうか。仕事としては、歩く範囲か、あるいは、自動車で移動、ということだったかと思う。廃品回収の仕事で地下鉄に乗ることはないだろう。だが、仕事以外の日常生活で、地下鉄の必要がなかったというのは、いったいどういう生活をしてきたのだろうか。
今の韓国だったら、逆に、お金持ちで、移動はすべて運転手付きの自動車という人もいるだろうから、このような一部の人にとっては、地下鉄も不要かもしれない。その建設が、金儲けにつながるだけだろう。
人口の1パーセントが、国の富の4分の1を独占しているということは、あまりまともな国家とは思えない。これが進行するとするならば、中間層の消滅、貧困層の増大、ということになるかなと思う。特に、急激な少子化が進む中で、富が一部の富裕層に相続されて蓄積されていくことになる。相続税はあるとしても、どれだけ富の再分配に寄与するだろうか。
番組を見ている範囲のことだと、このようなスラムの成立、こういう生活は、1988年のソウルオリンピックあたりを契機として、韓国社会の構造的な問題としてあったということのようである。つまり、経済成長によって豊になった人びとがいる一方で、そこから取りのこされた人びとがいて、放置されてきたということでいいだろうか。
意図的にそう取材して編集したのかと思うが、スラムには、老人ばかりだった。若い人や、子どもがいなかった。いたのだが、すでに、他の地域に住宅を提供されて移ったということなのだろうか。
韓国の、社会の階層構成と、子どもの生活の実態はいったいどんなふうなのだろうか。過激な受験戦争のことは、よく日本でもニュースでとりあげられる。しかし、そのような受験競争は、とにかくお金のかかることなので(これは、日本でも同じであるが、それ以上かもしれない)、取りのこされた子どもたちも大勢いることだろうと思う。
朝鮮戦争について、休戦、ということにしていたのは正しい。いまでも韓国と北朝鮮は戦争をしている。しかし、戦闘を休止しているだけのことである。
2026年4月27日記
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