『佐武と市捕物控 杖と十手の巻』石ノ森章太郎2019-07-23

2019-07-23 當山日出夫(とうやまひでお)

佐武と市捕物控

石ノ森章太郎.『佐武と市捕物控 杖と十手の巻』(ちくま文庫).筑摩書房.2019
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480436061/

続きでである。
やまもも書斎記 2019年7月12日
『佐武と市捕物控 江戸暮しの巻』石ノ森章太郎
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/07/12/9127542

「佐武と市」シリーズの文庫本、第二冊目である。

この巻の主人公は、市の方かもしれない。どうやら編集としては、市を主にあつかった作品を集めてようである。

その市について描いていることは、次の二点になるだろうか。

第一には、剣劇アクションとしての魅力である。

なぜ自分は人を斬るのか、自問自答しながらも、向かってくる相手には、容赦ない。その強さは、群を抜いている。剣豪漫画というジャンルがあるのかどうか知らないが……私の記憶にあるものでは「無用ノ介」(さいとう・たかお)などが思い浮かぶが……剣劇アクション漫画として、非常にすぐれていると感じるところがある。剣劇のアクションの視覚的表現において、作者(石ノ森章太郎)ならではの境地が見られると言っていいだろう。

第二には、その市のこころである。

市は人を斬る。なぜ、自分は人を斬らねばならないのか、あるいは、さらに、なぜ自分はこうも強いのか、市は悩む。だが、向かってくる相手がいる以上、仕込み杖をぬかざるをえない。そして、また、人を斬ってしまう。この市のこころの中の葛藤とでもいうべきものが、しみじみと描かれてもいる。

以上の二点が、この第二冊を読んで感じるところである。

さらに付け加えるならば、この巻に収録の「シャマイクル」という作品。舞台を北に移して、アイヌの人びとのことが出てくる。おそらく、漫画という、いわゆるサブ・カルチャーの分野においてのみならず、メディア全般のなかで、アイヌの人びとに視線をむけているという観点からは、特筆しておくべきものであると思える。(このあたりは、日本の言論空間におけるアイヌの歴史というような仕事があっていいと思う。私が知らないだけなのだろうが。)

次は、第三冊目である。どのような編集になっているか、楽しみに読むことにしよう。

追記 2019-08-16
この続きは、
やまもも書斎記 2019年8月16日
『佐武と市捕物控 愛憎と綾の巻』石ノ森章太郎
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/16/9141540

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