『カッティング・エッジ』ジェフリー・ディーヴァー2019-10-14

2019-10-14 當山日出夫(とうやまひでお)

カッティング・エッジ

ジェフリー・ディーヴァー.池田真紀子(訳).『カッティング・エッジ』.文藝春秋.2019
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163911120

ジェフリー・ディーヴァーの作は、翻訳が出るときに買って読んできている。これは、『ボーン・コレクター』以来、ずっとそうしてきている。すこし待てば文庫本になるのだが、しかし、文庫本になったからといって、そう格段に安くなるということもない。単行本の発売を待って買って読むことにしている。

私は、この『カッティング・エッジ』まで、リンカーン・ライムのシリーズは、順番に全部読んできているはず。それをふまえて思うことは次の二点。

第一には、やはりこれは傑作と言っていいだろうということ。

しかし、傑作と言ってしまうのは、ちょっとためらわれるところもある。それは、この作品が、単独での完成度が高いということもあるが、それよりも、これまでの、リンカーン・ライムのシリーズ、さらには、キャサリン・ダンスのシリーズを読んでいることを前提として、その良さが分かるという面があるからである。

とはいえ、最後の方になってあきらかになる「真相」……これは、さすがにジェフリー・ディーヴァーの作品だなと感じさせるところがある。

第二には、この本の訳者あとがきに書いてあることだが、作者(ジェフリー・ディーヴァー)は、この後、別の新シリーズに手をつけているらしい。これも、なるほどという気はする。

リンカーン・ライムのような科学的な捜査法、特に物理や化学を中心として、この捜査方法は、近年のサイバー犯罪などには、あまり意味がない。無論、「犯罪」の種類によっては、このような捜査方法が有効であることもあるだろう。しかし、それでは、シリーズとして、マンネリになってしまう。

この作品では、これまでの本にみられたような、ホワイトボードに書いた証拠物件の一覧、というものが登場してきていない。つまり、リンカーン・ライムの科学的な捜査方法で、犯人をおいつめるという方向の作品にはなっていない、ということになる。(だが、作品の随所に科学的捜査法は登場する。)

つまり、読み始めてすぐに感じることだが、この作品になって、従来の作品であったような科学的捜査法とは別の筋書きが用意されていることになる。そして、その筋書きにしたがって、ラストへと物語はすすむ。

以上の二点が、この本を読んで思うことなどである。

おすすめの作品ではあるが、しかし、それは、これまでの他の作品を読んできている人にとっては、より一層たのしめる作品になっている。

ともあれ、次作の新シリーズに期待することにしよう。

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