デジタルアーカイブ論2008-01-01

2008/01/01 當山日出夫

正月そうそう、こんな仕事はしたくはないが……次年度のシラバス入稿画面を確認する。いつのまにか、「デジタルアーカイブ論」が増えている(!?) 映像学部の事務の方からは、何の事前連絡もなし。まあ、文学部の方とうまく調整してくれればいいとしておこう。

昨年末、赤間先生(アートリサーチセンター)から話しがあって、担当してくれないか、ということなので、まあ、いいでしょう、とひきうけておいた。映像学部の学生(2回生)対象の半期の授業。この学部、去年できたばかりだから、ほとんど白紙の状態の学生を教えることになる。

映像学部は、かなり実学的な指向のコンセプトで設立されている。建物や設備もプロ用の最新であるし、当然、プロ用の映像機材もそなえている。さらには、太秦に映画スタジオも建設の予定らしい。

そんななかにあって、どうすべきか……きわめて実務的な仕事について考えていくか、あるいは、いっそのこと、「そもそもアーカイブということは」とおもいっきりメタのレベルの議論を展開してみるか。

しかし、これは、ひとつのことのウラ・オモテである。理念を欠いた実践は無意味であるし、実践の裏付けのない理念は空虚である。

だから、いうわけでもないが、とりあえず、この「やまもも書斎記」のリンクのところに、「ARG」(Academic Resource Guide)のHPへのリンクを追加しておいた。

元旦の最初に着信していたメールが、ARGの303号。読んで、さっそく、いくつかの本をオンラインで注文する。また、次回のCH研究会(情報処理学会、人文科学とコンピュータ研究会)は、アーカイブの小特集。場所は、東洋大学。私は、横山さん(国語研)との共同発表で行くことになるが、プログラムを見ると、かなりレベルの高い発表が期待される。

當山日出夫(とうやまひでお)

私的「じんもんこん2007」覚え書き(余録1)2008-01-01

2008/01/01 當山日出夫

とりあえず、今回の「じんもんこん2007」のクロージングまで記述できたところで、Googleで検索をかけてみる。

発表者で、このシンポジウムについてついての言及が見つかった。

村上猛彦さんたち(和歌山大学)

http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20071214/1197579913

論文集を読み直してみるのだが……個人的感想としては、文系・理系のミスマッチのよくある例のように思える。

情報工学の側からのシステム開発の意図はわかるのだが、では、このシステムで、仏教研究にどのように意味があるのか、正直な感想としては、判然としない。

1.金剛寺一切経を対象として、その研究のためなのか。その本文が、他の一切経とどのように異同があるのかの、テキスト・クリティックのための手法の開発なのか。これに限定したものであるならば、なんとか理解できる。

2.しかし、それだけの技術とエネルギーを、もっと他の文献に応用してくれないものかと思ってしまう。金剛寺一切経の価値は認めるにしても、東洋学全体をみわたせば、他に優先順位の高いものがあるように思えてしかたがない。

3.一般に、画像データの資料と、翻刻された(コード化された)テキスト、この対応関係・検索のためのシステム開発なのか。そうなると、テキストの異同のみならず、異体字処理について、きわめて煩瑣な手続きが必要になる。文献ごと、あるいは、研究者の研究目的によって、個別の、異体字変換テーブルが必要になる。この煩雑な、東洋文献学の実態について、どれほど理解しているのだろうか。(逆にいえば、このことは、文字研究にたずさわる、私のようなものの責任でもあるのだが。)

私の希望としては……このようなシステム開発が、情報工学の内部だけの技術的課題にとどまらずに、テキスト(写本にかぎらず)をコンピュータの文字に翻刻(文字コード化)することの本質にせまるものを目指してほしい。そのためには、常に人文学の側の研究者との密接なコミュニケーションが欠かせない。

「じんもんこん」のシンポジウムや、CH研究会、その他の各種の研究会などが、その場を提供するものとして、育っていってくれることに期待したい。これが、年頭においての、所感である。

當山日出夫(とうやまひでお)