BS世界のドキュメンタリー「北極が溶けるとき 温暖化が招く新たな対立」 ― 2025-05-16
2025年5月16日 當山日出夫
BS世界のドキュメンタリー 「北極が溶けるとき 温暖化が招く新たな対立」
2024年、イギリスの制作。
アメリカのトランプ大統領が、グリーンランドを自国のものにしたいと言ったとき、日本の、特に、反トランプの立場をとるいわゆるリベラルよりの人たちは、馬鹿げた誇大妄想として、ほとんどとりあわなかった。しかし、これが、北極海の覇権をめぐる争いに、これからアメリカはプレゼンスを増す方針である、その表明である(確かに言い方は粗雑ではあったが)と、理解した人がどれぐらいいただろうか。
どこに書いたか忘れてしまったが、このとき私は、このように書いたのを憶えている。トランプ大統領の発言に、デンマークの首相は、即座に拒否する姿勢を見せず、それは、グリーンランドの人びとの決めることだ、という意味のことを言った。これは、グリーンランドの北極海の地政学的な重要性を理解したうえで、将来的にここをデンマーク一国で管理し防衛することの困難を分かった上での発言だと、私は理解して、ニュースを見ていた。
北極海の軍事的意味については、以前から、小泉悠などが指摘してきていたところだったはずである。
地球温暖化の影響で、北極海の氷がとけるとすると、その石油やガス、レアアースなどの資源、漁業、それから、北極海航路の確保……これらをめぐって、熾烈な争いがおこる可能性がある。このことにいち早く手をつけたのがロシアであり、見方によっては、ウクライナ侵攻も、大きなロシアの対世界戦略の一環であったと理解することができよう。
これに対抗するのがNATOであり、ノルウェーやフィンランドなどのことが、紹介されていた。
そして、北極海の権益については、中国も意欲を示している。
そうなると、日本海からオホーツク海について、日本のみならず、韓国や北朝鮮をもまきこんで、きわめて複雑な情勢が生まれてくることは予想される。いや、もうすでにそうなっている、というべきである。
開かれたインド太平洋と言っているが、その太平洋は、北極海にも続いている。日本周辺の北の海は、中国とロシアを相手にしての、軍事的緊張の最前線であるということになる。
しかし、この番組では、日本のことは一言も出てきていなかった。現状では、まだ日本が北極海の覇権をめぐるゲームのプレーヤとは、認識されていないということかもしれないが、そんなことはないはずである。
強いていえばということになるかもしれないが、日本の強みは、日本海、オホーツク海の海中を知っている……ソナーによる潜水艦探知能力がある……ということなのかと思うが、はたして実力のほどはどうなのだろうか。(これは最重要の軍事機密にちがいないが。)
そして、北極海での軍事的プレゼンスという意味では、日本とNATOとの連携ということは、確実に視野にいれて議論しなければならないことになるはずである。
2025年5月14日記
BS世界のドキュメンタリー 「北極が溶けるとき 温暖化が招く新たな対立」
2024年、イギリスの制作。
アメリカのトランプ大統領が、グリーンランドを自国のものにしたいと言ったとき、日本の、特に、反トランプの立場をとるいわゆるリベラルよりの人たちは、馬鹿げた誇大妄想として、ほとんどとりあわなかった。しかし、これが、北極海の覇権をめぐる争いに、これからアメリカはプレゼンスを増す方針である、その表明である(確かに言い方は粗雑ではあったが)と、理解した人がどれぐらいいただろうか。
どこに書いたか忘れてしまったが、このとき私は、このように書いたのを憶えている。トランプ大統領の発言に、デンマークの首相は、即座に拒否する姿勢を見せず、それは、グリーンランドの人びとの決めることだ、という意味のことを言った。これは、グリーンランドの北極海の地政学的な重要性を理解したうえで、将来的にここをデンマーク一国で管理し防衛することの困難を分かった上での発言だと、私は理解して、ニュースを見ていた。
北極海の軍事的意味については、以前から、小泉悠などが指摘してきていたところだったはずである。
地球温暖化の影響で、北極海の氷がとけるとすると、その石油やガス、レアアースなどの資源、漁業、それから、北極海航路の確保……これらをめぐって、熾烈な争いがおこる可能性がある。このことにいち早く手をつけたのがロシアであり、見方によっては、ウクライナ侵攻も、大きなロシアの対世界戦略の一環であったと理解することができよう。
これに対抗するのがNATOであり、ノルウェーやフィンランドなどのことが、紹介されていた。
そして、北極海の権益については、中国も意欲を示している。
そうなると、日本海からオホーツク海について、日本のみならず、韓国や北朝鮮をもまきこんで、きわめて複雑な情勢が生まれてくることは予想される。いや、もうすでにそうなっている、というべきである。
開かれたインド太平洋と言っているが、その太平洋は、北極海にも続いている。日本周辺の北の海は、中国とロシアを相手にしての、軍事的緊張の最前線であるということになる。
しかし、この番組では、日本のことは一言も出てきていなかった。現状では、まだ日本が北極海の覇権をめぐるゲームのプレーヤとは、認識されていないということかもしれないが、そんなことはないはずである。
強いていえばということになるかもしれないが、日本の強みは、日本海、オホーツク海の海中を知っている……ソナーによる潜水艦探知能力がある……ということなのかと思うが、はたして実力のほどはどうなのだろうか。(これは最重要の軍事機密にちがいないが。)
そして、北極海での軍事的プレゼンスという意味では、日本とNATOとの連携ということは、確実に視野にいれて議論しなければならないことになるはずである。
2025年5月14日記
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