美の壺スペシャル「国宝」2026-01-08

2026年1月8日 當山日出夫

美の壺スペシャル「国宝」

再放送である。最初は、2024年4月6日。

最初の放送のとき、半分ぐらい、なんとなく見ていた記憶がある。

曜変天目茶碗は、ちょっと前に、展覧会があって見に行こうと思えば行けたのだが、もう隠居した身としては、外に出たくない気分だったので、どれも見に行かなかった。特に惜しいとも思っていない。もう、世捨て人である。

私自身の好みとしては、曜変天目よりも、志野の茶碗の方が好きである。あまりにも完璧な美を追究したというよりも、どこか偶然にまかせて、自然なところがあるのがいい。若いころは、中国の陶磁器で、定窯白磁がいいと思っていたのだが、整いすぎた形かなと感じるようになってきている。

私は、刀剣の良さが分からない。確かに美しいということは理解できるつもりなのだが、経験的に、それに見入ったということがない。刀は作られたときから、単なる武器ではなく、美と精神を宿したものであった、ということは分かるのだが、一方で、実用として(端的には、武器として)発達した面もある。しかし、それが、現代にいたるまで、美術品であり続けているというのは、日本の文化ということだとは思う。(昔、大山祇神社に行ったことがある。そのときは、フェリーで行ったのを憶えている。)

松江城の天守の国宝昇格の話しは、とても面白い。別に、国宝にならなくてもいいとは思うのだが、いわゆる「旧国宝」というのでは、なんとなく面白くないという心情が分からなくはない。

興味深いのは、昭和の戦後の解体修理のときの図面が残っていること。松江城の天守が国宝になったとして、発見された図面は、今はどうなっているのだろうか。文化財指定は難しいのかもしれないが、しかるべく保存処理しておくべきだし、現在なら、デジタル化して残すべきだろう。紙のままの保存では限界がある。

祈祷札が国宝指定の決め手になったということである。築城年代を推定するなら、科学的方法……年輪年代学とか炭素同位体とか……あるだろうと思うが、年紀のはっきとした祈祷札というのは、説得力があることは確かである。

東京国立博物館のデジタル展示や複製は、意味のあることではある。だが、ありきたりな言い方だが、本物のもつオーラということは、経験的にいって確実にある。また、重要なこととして、その文化財の大きさ、ということもある。これが、デジタル画像だと分からない。元永本古今集が出ていたが、実物の本が、どれぐらいの大きさのものであるか、ということも重要な要素である。画像を見るなら、e国宝で見ることができる。

洛中洛外図屏風についても、デジタル画像で細部を拡大して見ることのメリットはある。また、レプリカだからこそ、実際の、建物の中において見るということができる。ただ、これが作られた時代の建物がどんなだったか、明障子が普通にあったか、室内の照明が灯明か行灯ぐらだったとして、その明るさや色温度は、どんなものだったのか、ということは気になる。

洛中洛外図(舟木本)は、東京国立博物館の所蔵である。デジタル画像なら、e国宝でも見られるし、文化遺産オンラインでも見られる。ColBaseでも見られる。部分的に拡大して見たい場合には、デジタル画像が便利である。

高雄曼荼羅が出てきていた。真言宗にとっては、もっとも貴重なものである。だが、残念ながら、私は、曼荼羅を見ても分からない。理屈として、こういう世界観、宗教観を表現したものであるということは知っているのだが、美術品として、綺麗だなと感じたことがない。まあ、こういうものは、そもそも見てきれいと感じるように作ったものではないことはたしかだと思うけれど。

修復にあたったのは、岡墨光堂。京都にある、このような工房しか、文化財の修復はできないし、番組で言っていたように、修復を重ねていくことで、文化財は守られるのである、ということはそのとおりである。ただ、昔のものが、そのまま残っているというだけではない。

文化財修復のために使う和紙も、また重要である。文化財に限らず、古文書の他、紙で残っているものの修復にはかかせない。紙を漉く職人の技が継承されなければならないし、原材料や、その自然環境が残っていかないといけない。(これからの日本で、そういう場所を、どれだけ残せるかは、大きな課題だと思う。)

木造の文化財のためには、まず、樹木を育てていかなければならない。そのための植林は、世代を越えての仕事になる。自分が生まれる前から育ってきた樹木を、自分が死んでからさらに後に、誰かが利用することになる。こういうことの、価値観の継承ということができないといけないので、ただ、山林を守ればいいというものではない。

2026年1月6日記

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