CH-79(1)2008-08-01

2008/08/01 當山日出夫

今回のCH研究会(情報処理学会・人文科学とコンピュータ研究会)は、神奈川県立金沢文庫。

金沢文庫は、かつて、鎌倉時代、北条氏の「文庫」であった。今でいえば、図書館であり、文書館、である。その後、金沢文庫本としコレクションされたもので、流出したものの多い。私が研究対象として選んでいる、「金沢文庫本白氏文集」も、かつて、金沢文庫に旧蔵されていたので、こう呼ばれている。現在、この本を持っているのは、大東急記念文庫、天理図書館、国立歴史民俗博物館、など。

しかしながら、金沢文庫独自の資料(史料)としても、現在、膨大なコレクションを持っている。まだ、未開拓である研究資料も多い。研究会のあったとき、展示されていた、中世の「唱導」資料なども、そう。

ところで、CH-79の研究会、朝、京急の金沢文庫駅で降りたはいいが、とってもとっても、暑い。とても、15分を歩く元気がなかった。ということで、同行の何名かと、タクシーに分乗。

会場について、まず、会場設営の準備をてつだう。9時にならないと開かない施設で、9時20分から発表というのは、かなり厳しい。だが、どうにか、準備できた。

まず、最初の発表は、

文字生活研究における「景観文字調査」(高田智和・田島孝治・米田純子)。

私にとっては、高田さんたちと一緒にすすめている景観文字研究の一部になる。具体的にGIS技術で、地図上に表示するシステムを、田島さんが作ったので、そのプロトタイプのおひろめ。

GIS技術は、現在、いろいろとある。地理学で考えるGISもあれば、情報工学で考えるGISもある。この場合、えてして、技術先行になってしまいがち。それに対して、高田さんたちの発表は、コンテンツ先行。景観文字調査では、このような資料(街角の看板など)をとりあつかう。ゆえに、このようなシステム(GPSレシーバ、GISでの地図への展開)などが必要、という、人文学研究者からの姿勢が明確である。

まず、人文学研究のデータ(資料)があり、それをどうあつかうのか、という方向での、情報工学からの協力。この意味では、非常に、いい発表であったと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)

WSの2回目を企画中2008-08-01

2008/08/01 當山日出夫

先日(7月19日)の「ワークショップ:文字-(新)常用漢字を問う-」には、たくさんの方がいらしてくださいました。そして、懇親会も、もりあがりました。

意外だった(?)のは、印刷・出版関係の人が多かったこと。それにくらべて、日本語学(国語学)における文字研究者が、あまりいなかった。う~ん、これは、やはり、時代の流れなのでしょう。

日本語研究が、(新)常用漢字やユニコードといった、文字の規格について、イニシアティブをとれるという時代は、もう、終わった、と考えるべきか、私としても、いろいろ考えるところがありました。

5月の日本語学会(日本大学文理学部)のときは、会場は大盛況でした。これは、文字の規格というよりも、書記とか表記について、関心のある研究者があつまったせいなのでしょう。しかし、これからの日本語、特にその表記や書記を考えるためには、コンピュータを抜きにしては、語れないのですが。

ともあれ、今、やっていること。

先日の「WS文字」を、第1回として、できれば、連続で開催したい。そして、それを、逐次、本のかたちにしたい。その編集と企画を、考えているところ。

考えてみれば、文字(キャラクタ)についての、一般的な研究会とか、論集とかは、そう多くありません。今回のWSをきっかけに、このような研究分野をひろげていきたい。これには、旧来のアカデミズム(大学)の枠を越えて、実際の印刷とか、タイポグラフィにかかわっている人たちとの協力が必須になります。

『国語文字史の研究』(和泉書院)とは、また違ったスタンスでの、文字研究にとりくんでいく、そのお手伝いができれば、と、考えている次第。

當山日出夫(とうやまひでお)