「ハマス 謎に満ちたイスラム組織の実像」2024-03-17

2024年3月17日 當山日出夫

BS世界のドキュメンタリー ハマス 謎に満ちたイスラム組織の実像

二〇二三年、フランスの制作。

なぜこの様な番組が日本のメディアで作ることができないのかと思う。特に取材源を秘匿すべき特殊な情報があるということではない。見た限り、ジャーナリスト、国際政治の専門家なら容易にアクセスできる(であろうと思われる)情報によって作ってある。

ハマスによるイスラエル攻撃があったころ、日本のメディアでは、ハマス擁護の声が大きくあった。いわく、選挙で支持されている、福祉の活動をしている。だが、それが、ハマスという組織の一つの面にすぎないことが分かる。今ではハマスは独裁者であり、軍事的に市民を抑圧する存在でもある。また、反イスラエルをかかげる中東の国から支援を受け、ビジネスにも手を出している。

番組の中では、ハマスのプロパガンダ映像が多く使われていたが、これはそんなにアクセスが難しものなのだろうか。日本のテレビ報道では見たという記憶がない。プロパガンダ映像は、それをそれと知ったうえで使う限り、かなり有効な情報源の一つになると思うのだが。

ハマスが地下のトンネルの基地で、ロケット弾を製造している場面の映像、軍事訓練の様子など、ハマスのプロパガンダ映像ということなのだが、日本のテレビ報道などでは紹介されていなかったと憶えている。

ハマスの奇襲作戦が成功した理由の一つとして、デジタル機器による通信ではなく(これは傍受される可能性がある)、昔のように紙に書いた文書で情報を伝えていたというのは、興味深い。

ドローンを使った、イスラエルの監視所への攻撃や戦車への攻撃の映像など見ると、これからの戦争においてドローンがきわめて重要な役割をはたすことが分かる。(ドローンは民生用と言っていたが、基本的に、デュアルユースであると理解しておくべきであろう。)

ガザ地区にいる人びとの多くは若者である。生まれたときからイスラエルの攻撃を体験し、同時に、ハマスによる洗脳教育(と言っていいだろう)を受けてきた若者たちにとって、反イスラエルの心情は、その体に染み込んだものになっている。

特にイスラエルよりでもないし、パレスチナよりでもない、という立場で作った番組と私には感じられる。ハマスという組織がパレスチナに生まれて現在のようにして支配者になったかという経緯が、端的にまとめられていたと思う。少なくとも、パレスチナの人びとのすべてがハマス支持ということではない。そこには恐怖の支配があることも事実である。

もっとも興味深かったのは、ハマスへのアラブ諸国などからの資金提供をイスラエルが容認していたこと。イスラエルの右派とハマスとは、つながっていることになる。(敵が存在することによって自分たちの存在意義が確認できるという構図だと理解するのだが。)このようなことは、日本の報道では言及されることがない。ということは、ネタニヤフ政権のミスは、ハマスの作戦を事前に察知できなかった諜報の失敗ということもあるが、それと同時に、ハマスと秘密裏にコンタクトをとってコントロール出来なかったことにあると見るべきかもしれない。

憎悪と報復の連鎖を終わらせ、なんとか平和……少なくとも、長期にわたる停戦の実現と人道支援の継続ということになるかと思うが……このためには、パレスチナの人びとに、将来への希望を与えることである、ということでこの番組は終わっていたが、これには深く同意するものである。

2024年3月14日記

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