「スイスの象徴になった少女〜“ハイジ”はこうして生まれた〜」2025-02-24

2025年2月24日 當山日出夫

「スイスの象徴になった少女〜“ハイジ”はこうして生まれた〜」

2022年、ドイツ、フランス、スイスの制作。

この番組、以前、BS世界のドキュメンタリーで放送したものである。探せばテレビのHDに残っているかと思ったのだが、面倒なので、Eテレのドキュランドへようこそ、で放送があったのでそれを改めて録画して見た。

スイスに行ったことはないのだが、行くと、ハイジのキャラクターグッズがたくさん売っているらしい。そのなかには、日本のテレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』のキャラクターを使ったものも多いようだ。

『アルプスの少女ハイジ』は、だいたいのストーリーや登場人物は知っているが、テレビで全部を見たということはない。(そういえば、たしかこの放送の枠のなかで、「名犬ラッシー」などもやっていたかと憶えている。中に描かれたイギリスの炭坑町の風景が、「わが谷は綠なりき」に出てきた風景と同じだったという印象をもっている。この映画、黒澤明が最も好きな映画だと言ったことでも、知られているかと思う。)

興味深いこととしては、十九世紀の半ばのヨーロッパの中流階級、ブルジョア、という人びとの生活にあって、ハイジという少女の生き方は、非常に斬新であったということ、こういうことは、これまであまり考えてみたことがなかった。だが、言われてみれば、おそらくそうなのだろうと思う。

ちょうど時代としては、アメリカでは南北戦争があり、この時代を背景に『若草物語』が書かれた時代ということになる。この時代の、女性の生き方として、『若草物語』は、人間性と個性を尊重して、人間の善良な部分を非常に肯定的に描いた小説として、今にいたるまで価値のある作品になっている。

ハイジという少女の物語も、また、ヨーロッパにあって、その時代に生きた女性の考え方が、投影されたものであり、この場合には、その小説を書くことにによって、想像と創造のなかで、自由を得たということになるようだ。

番組のなかに登場していた小田部洋一が、スイスに行って、光が違う、空気が輝いている、ということを言っていた。これは、映像作品を作る人間ならではの感想だろう。

現在に伝わる「ハイジ」の作品は、続編としては、作者の了解を得ずに勝手に作ったものがあるという。フランス語版で、今でいう、二次創作のような形で、その後の「ハイジ」の物語が、作られた。今のように厳格に著作権を主張する時代ではなかったろうから、これもいたしかたないことかと思うと同時に、「ハイジ」という少女が、どのように、人びとに受容されていったか、ドイツ語圏とフランス語圏で違いがあるなら、これはこれとして、とても興味深い。

おそらく「ハイジ」という少女の物語をどう受容してきたかという観点からは、西欧の女性の歴史の一端をひもとくことができることになるのだろう。

2025年2月18日記

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