ETV特集「シリーズ 日本人と東大 第2回 壁 と 翼〜“女子学生2割”の問いかけ〜」2025-04-09

2025年4月9日 當山日出夫

ETV特集 シリーズ 日本人と東大 第2回 壁 と 翼〜“女子学生2割”の問いかけ〜

男女平等ということについては、理念としては反対する人はまずいないだろう。問題なのは、どのような状態なったときに、それが実現したといえるのか、具体的な話しになると、見解の対立が起こることである。

究極的には、自然の状態に根拠をもとめるしかない。世界には、人間がいるだけなのだからそれはすべて平等であるべきだ。世界には、男性と女性が存在しているのだから、そのちがいはみとめるべきだ。おそらく、その正しさの根拠となるところを、つきつめていけば、ここのところにいきつくしかない。

機会の平等は実現が比較的容易であるが、結果の平等は難しい。どういうことをもって、結果の平等といえるのか。そこには、一つの解答があるわけではない。結果的にこうなっているのは、出発点からの問題である(=本質的に機会の平等が実現されていない)、というおそらく堂々巡りの議論になる。

この番組は、東京大学と女子学生ということにポイントを絞っているので、ある意味で、論点が明確であり、問題点も分かりやすい。また、その歴史をたどっていることは評価されるべきである。

戦後になってからの、女子学生亡国論、男女雇用機会均等法がかならずしもすべての女性の賛同があったわけではないこと(反対する女性もいた)、アグネス論争、こういう紆余曲折の歴史があって、その結果、いまだに東京大学の女子学生が二割ということになる。

女子学生の数を増やすには、推薦入試を増やせばいい、という。だが、これも現実の問題としては、東京大学に推薦で入れるような高校は限られている。他の大学の推薦入試に比べれば、多様性があることにはなっているが、実際に多くの学生を推薦で入学ということになると、これはこれで、新たな教育格差問題が生じることになるかもしれない。このあたりの議論は、別にきちんと考える必要がある。

東京大学の入学者が、首都圏、都市圏の、中高一貫私立学校に偏っていることは、周知のことである。女子学生を増やすことと、その出身校、出身地、がどうなるかということは、総合的に考えなければならないことである。

この番組について思うこととしては、日本には多くの大学があるのだから、なにもかも東大の責任、というふうに議論をもっていかなくてもいいかとも思う。大学の方針として、多様な選抜で多様な学生を入学させたいという学校もあれば、学力試験だけの勝負で決まる、という大学もあっていいだろう。多様性にも多様性がある、ぐらいの視点で考えることも必要であると、私は思う。

ここには、東京大学が日本のトップの大学でなければならないという、思い込みがある。東京大学の日本でトップのエリート大学であるならば、男女平等の実現においてもトップでならなければならない。まずは、こういう思い込み、あるいは過剰な自負、を捨ててみることが大事だと思うのだが。

それから、大学の入学者で考えていたが、これが、大学院になると、分野にもよると思うが、かなり事情が異なってくるかもしれない。一部の分野については、男性は大学院に進学しようとしなくなっている。そのメリットを感じられない社会であるともいえる。これも、研究分野ごとに、修士課程、博士課程、博士号の取得、その後のキャリア、さらに細かく見なければならないことではある。

司法試験についてみれば、合格者の女性比率は高まってきている。これは、決してアファーマティブアクションのせいではなく、試験の成績だけで決まることであり、また、法曹の分野が、まさに法律を遵守する世界であるからこそ、女性が特にハンディを感じることが、少ない(ここは少ないと言っておく、まったく無いということではないだろうから)ということに起因するだろう。(司法試験をめざすなら、別に東大でなければならない理由はないけれど。)

さらに考えるべきこととしては、地方出身の若い女性(大学生)が、一人で生活するのに、東京という街がどうなのか、という観点も必要かと思う。東京という街が本当に魅力的で住みやすい街なのか、また、地方に住み続けることが、どうしようもなくいやなことなのか。どうだろうか。

もし、東京大学が、どうしても(数字の上で)男女平等を実現したければ、場合によっては、かなり強引なアファーマティブアクションによるしかないかもしれない。だが、それでは、問題の本質的な解決にはならない。そうなれば、優秀な女性は東京大学をさけるようになるかもしれない。

2025年4月6日記

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