BS世界のドキュメンタリー「ザ・ボーンズ 恐竜化石は誰のもの?」2025-04-11

2025年4月11日 當山日出夫

BS世界のドキュメンタリー 「ザ・ボーンズ 恐竜化石は誰のもの?」

2024年、ドイツ、カナダの制作。

ビッグ・ジョンの競売のことは、知っていることなのだが、世界には、恐竜の化石をめぐって、いろいろとある。

そもそも恐竜の化石は誰のものか、という視点はたしかにある。人類の共通の資産であると、いうこともできる。一方で、それをほしい人がいて、マーケットが成立するということもある。これは、今の世の中では、もはやとめることのできないことだろう。

モンゴルで、アメリカの自然史博物館が調査に来て持って帰った化石の返還をもとめているということは、理解できないことではない。しかし、それをいうならば、他にも、問題となることがあるだろうとは思う。この番組のなかで登場していないのが、ソ連とロシアであったが、モンゴルが社会主義国であったとき、どうだったのだろうか。また、中国における恐竜の化石の発掘の状況はどうなっているのだろうか。

モンゴルが社会主義をやめたとき、社会の状況はどうだったのだろうか。これは、ほとんど日本で大きく報道されることはなかったかと憶えている。国営企業に勤めていた人が仕事をなくし、売れるものはかたっぱしから売っていった。その中に恐竜の化石があったとしても、おかしなことではない。

アフリカのモロッコでは、恐竜の化石を売ることしか、収入を得る手段がない人たちが生活している。これは、国家と社会の構造的な問題であるので、それを止めさせることは、むずかしいだろう。

アメリカで、恐竜の化石のマーケットが、コミケみたいに開催されている。ここには、博物館なども、見に来るらしい。

いずれにせよ、恐竜の化石の学問的価値ということとは別に、そのコレクターがいて、とにかくどんなにお金を払ってもいいから手に入れたいと思っていることは、どうしようもないことだろう。いや、長い目で見ると、歴史の中において、美術品など今まで残ってきているのは、コレクターというべき人たちがいたおかげ、という側面もあるにちがいない。

映画『ジュラシック・パーク』が、古生物学に与えた影響は、かなり大きなものがあったということになる。映画では、琥珀の中の蚊から古代の生物のDNAを採取して、それをもとに恐竜を甦らせようというものだったが、これから、生物学やさまざまな技術が進歩していくと、こういうことは、かならずしもまったく空想ということではなくなるのかもしれない。さて、これが、科学の倫理としてどうなのか、ということはあるだろうが、技術的に可能ならやってみたくなるのが人間である。

今ではGPSで、砂漠のまんなかのような場所でも、ピンポイントで位置を特定できるようになったことも、化石の発掘を便利にしたのだが、同時に、盗掘することも容易にしたことになるだろう。

科学的には、どの場所の、どういう地層に、どのような状態で埋まっていたのか、ということが重要な情報になるはずなのだが、盗掘されると、こういう貴重な情報が失われてしまう。

恐竜の化石の闇のマーケットというようなことは、科学番組では、あつかうことのないテーマかもしれない。しかし、世の中でこういうことが行われているということは、古生物学など勉強しようと思っている学生は、知っておくべきことにちがいない。

2025年4月7日記

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