『雷撃深度一九・五』2009-05-07

2009/05/07 當山日出夫

池上司.『雷撃深度一九・五』(文春文庫).文藝春秋.2001.(オリジナルは、新潮社.1996)

私が知る限り、日本で最高の潜水艦小説である。

今日、帰りがけに本屋さんによったら、映画『真夏のオリオン』の割引券が、レジのところにおいてあった。まあ、なにげなく手にとって、家に帰ってみてみると、原作『雷撃深度一九・五』(池上司)とあるではないか。

で、(いまどきだれでもそうだろうが)、Googleで検索。福井晴敏が、手を加えているとのこと。余計なことせんでもいい、というのが率直な感想。

だからといって、福井晴敏を悪く言うつもりはない。『終戦のローレライ』は、読んでいる。最後の艦長の命令の一言を目にするだけでも、ページをめくって読んでいく価値はある。

しかし、どう手を加えようと、原作を上回るようにはできないだろう。やはり、伊58潜水艦と、重巡洋艦インディアナポリスとの戦いを純然と描くに限る。そして、インディアナポリスは、何を積んでいたのか……このあたりは、すでに、いくつかの小説で描かれているところでもある。

う~ん、というよりも、原作に忠実にといっても、もう、今の若い世代には、無理かなとも思う。なにせ、これを書いている私の頭のなかでは、最高の潜水艦映画としては、『眼下の敵』が思い浮かぶのであるから。

なお、池上司の作品は、だいたい読んでいるつもりであるが、『ミッドウェイの刺客』(文春文庫)もいい。おすすめ(すくなくとも、『眼下の敵』が好きなような人には。)

當山日出夫(とうやまひでお)

デジタルの潮流について雑感2009-05-07

2009/05/07 當山日出夫

ここしばらくの『ARG』でのイベントカレンダーなど、見ていくと、昨年から今年にかけて、大きく流れが変わってきたように思える。個々のイベントではなく、大きな流れを見てみたい。

たとえば、最近の研究会では、

・『もう、「本」や「図書館」はいらない !?』
 図書館は視えなくなるか?-データベースからアーキテクチャへ -

・総合学術辞典フォーラム- 学問の危機と学問2.0-

・研究・教育のためのデータ連係ワークショップ(第1回)

などである。

それに、文部科学省による「デジタルミュージアム構想」もある。

また、本としても、

・『デジタルアーカイブにおける「史料基盤」統合化モデルの研究』、勉誠出版

・『歴史知識学ことはじめ』、勉誠出版

・『地域情報学の創出』、勉誠出版

・『情報歴史学入門』、金壽堂出版

・『日本文化デジタル・ヒューマニティーズの現在』、ナカニシヤ出版

などが、あいついで出版されている。(細かな書誌は省略)。

この大きな潮流の変化のなかで、すでに、生き残りをかけた戦いが、始まったともいえるかもしれない。もちろん、この他に、「しにせ」というべき、人文科学とコンピュータ研究会や、情報知識学会などの活動もある。

さあ、どうなるか、である。

當山日出夫(とうやまひでお)