アーカイブズから学ぶもの(2)2009-05-08

2009/05/08 當山日出夫

JSAS 日本アーカイブズ学会
http://www.jsas.info/

アーカイブズから学ぶもの(1)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2009/05/02/4282741

先日、「デジタルアーカイブ論」の授業で、国立公文書館・アジア歴史資料センターの紹介DVDを、学生に見せた。本物の歴史の史料を、自由に無料でインターネットで見られるシステムに興味関心を寄せた学生もいれば、「こんなものつまらない」と意見を記した学生もいる。もし、完全に、無記名で、ということであったならば、おそらく、否定的な意見はさらに多くなった可能性がある。

たぶん、その根底にあるのは、「自分たちはCG映像クリエイタなのである、過去の文書のデジタル画像なんぞに興味は無い」ということになるのだろうと、推測する。

これはこれといいとしても、問題なのは、今の学生が、そもそもアーカイブズに価値を見出さない、という社会的環境・教育環境にあることかもしれない。たぶん、
M(博物館・美術館)
L(図書館)
A(アーカイブズ、文書館)
の違いを知らない。(まあ、だから、教えているわけなのだが)。そして、そのうえで、「デジタルアーカイブ」について考えなければならない。むずかしい。

ところで、考えて見れば、「のこす」ということは、ある意味で、クリエイティブな作業である。何を残すか(棄てるか)、選別評価という作業がともなう。これは、過去~現在~未来を、みとおす幅広い知見がないとできない。

もし、自分がクリエイタであろうとするならば、ものを「つくる」ということ、過去のもの「つたえる」ということ、そして「のこす」こと、これらの関係を、感覚的に体得している必要がある、と私は思う。「つくる」ということに過度に価値をおきすぎて、みんなが、独創的な天才的クリエイタになれる、という幻想をいだいているかのごとくである。

私個人としては、日本には日本なりの「のこす」思想や文化があったと思っている。日本にある「のこす」思想を発掘すること、これも、また重要なことである。

「のこす」ことの文化的違い。これもまた、アーカイブズから学ぶべきものの一つであるにちがいない。それをふくめての、アーカイブズ教育だろうと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)