3か月でマスターする人体「(1)生命誕生の神秘」2026-01-04

2026年1月4日 當山日出夫

3か月でマスターする人体 (1)生命誕生の神秘

私自身が、人文学の領域の研究者として……日本語学における文字や表記の研究……勉強してきたこともあるからなのかもしれないが、自然科学のサイエンスの方法論にきちんとのっとって研究して、分かること/分からないこと、こういうことを分かりやすく語ってくれる番組は、貴重なものに感じる。この前のシリーズの、古代文明については、ウソはついていないのだけれども、意図的に話題にしていないことがたくさんあって、全体として、なんとなくごまかしているという印象がどうしても残るものであった。

この回も、本職の生物学研究者の目で見れば、いろいろと問題となる点はあるのかとも思う。が、とりあえず、見ながら思ったことを書いておく。

精子と卵子の受精のときのことからスタートであった。

技術的な問題としては、光学式顕微鏡で分かること、分からないこと、電子顕微鏡が使えるようになって分かること、こういう研究のための技術の発達と、それで何が分かってきたのか、こういうことは、きちんとふまえておくべきことだろう。こういう認識があって、将来、技術的な革新があって、今は分からないことが分かるようになる可能性を、見通すことができる。これは、サイエンスの検証可能性の問題につながることでもある。

幹細胞の確定ということは、おそらくは、技術的な課題とワンセットのことなのだろうと思うのだが、専門家はどう考えているのだろうか。

14日ルールは……原腸嵌入がおこるまでの段階、生命の萌芽ということになる……国や文化圏によっていくぶんの違いはあるとしても、基本的に、世界の研究者がまもるべきものとしてある。(だが、これを、まったく無視するような国があるかとも思ってはいるのだが。)

iPS細胞と、ES細胞の違いを、明確に説明してあったのも、いいところである。人間の受精卵に由来するES細胞を研究に使うことは、倫理的に問題がある。しかし、すでに成長して生まれて大きくなった人間の細胞から創るiPS細胞には、倫理的問題が無い(というか、少なくとも、現代では、倫理的な問題は大きくない、これも、将来の応用いかんでは、生命倫理の問題として考えなければならないことになるかもしれないが)。

(動物実験のレベルでは、オスのマウスから生殖細胞を作って、オスとオスから子どもができる、ということはすでにある。こういう技術を、将来的に、どのように応用的に発展させて使っていくのが妥当なのかは、難しい問題がある。)

面白かったのは、人間が受精卵から子宮の中で大きくなっていく過程で、細胞どうしが、なんらかの関係性があって、それぞれの組織や臓器になっていく。このときに、脳からの命令があってということではない。これは、人間にとって、究極的な存在として、脳を考えるか、遺伝子を考えるか、というのが今の時代の大きな流れだと思うが、これとは別の視点から、生命や人間というものを考えることになるかと、私には思われる。

受精卵には、父親由来の遺伝子があるのだが、それを、母親は拒否しない。このメカニズムがどうなっているのか、知りたいところである。おそらくは、有性生殖ということの、根本的なことにかかわる問題だろう。

さらに、生殖細胞は、受精卵から最初期の段階で分離する。他の組織になる細胞とは、経路を異にするになる。このシステムも、生物にとって有性生殖とは何であるのかを、考えることになるだろう。

人文学的な視点から見れば、本質主義として、生物はオスとメスがあるのが本来の姿であるのか(例外的に単為生殖というようなことがあるが)、あるいは、オスとメスに分かれて有性生殖する前の段階が本来の姿と考えるのか……こういうところの議論にかかわるテーマでもある。

最終的には、生命ということを、物理や化学ということで説明することが出来るのか、今の段階ではまだ無理なのか、サイエンスの方法論で、生命ということについて、どこまで語れるのか、ということになるのかと思っている。

2026年1月3日記

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