『カササギ殺人事件』アンソニー・ホロヴィッツ2018-10-12

2018-10-12 當山日出夫(とうやまひでお)

カササギ殺人事件

カササギ殺人事件

アンソニー・ホロヴィッツ.山田蘭(訳).『カササギ殺人事件』(上・下)(創元推理文庫).東京創元社.2018
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488265076
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488265083

上下二巻になる大作である。たぶん、今年のミステリベストには絶対入るにちがいない。まさに、ミステリの王道をいきながら、大胆で斬新なトリックでもある。

この本について書くのはむずかしい。が、思うところを記せば以下の三点ぐらいになるだろうか。

第一に、古典的フーダニットの作品。しかも、それが、多重構造になっている(まあ、ここまでは書いていいだろう)。

第二に、クリスティなどの古典的探偵小説へのオマージュにあふれている。ここのところは、さりげなく書いてあったり、あるいは、はっきりとそのように書いてあったりであるが、いたるところに、古典ミステリへの郷愁がただよっている。

第三に、これは、この作品のトリックには、東京創元社の編集部も加担している……としか思えない、本のつくりになっている。文庫本を手にして読み始めて、ふとある疑問をいだく。普通のミステリの文庫本と違う編集になっていると感じさせるところがある。それが、意味のあることであることは、読み終えて始めてわかる。

以上の三点ぐらいであろうか。

とにかく、上巻は、一気に読める。そして、下巻を読み始めてみると、いったいこれは何だと、大きな疑問の中につきおとされる。だが、こここで、上下巻を通じての多層構造になった謎は、最後には、見事に解き明かされる。フーダニットの傑作である。

なお、付言するならば……通常のミステリ作品として、登場人物の一覧が、本の中にある。だが、ある登場人物だけは、その一覧に出てきていない。これは、ミステリの老舗、東京創元社ならではのプライドをかけた編集と理解しておきたい。