「法医学者たちの告白」2024-07-06

2024年7月6日 當山日出夫

NHKスペシャル 法医学者たちの告白

法医学という分野のことが、テレビで大きくとりあげられること自体がとても珍しい。いろいろと面白かった。

思うことは多くあるのだが、一番驚いたことは、ルミノール反応のこと。血液がそこに存在したことの検証にルミノール反応が使われることは知っていたことである。このことは、ミステリ作品でもよく出てくる。

しかし、血液以外でも、山の中の落葉でも同様の反応が出ることは知らなかった。このこともあるのだが、実際に世の中のどのような場面や状況で、ルミノール反応があるのか、きちんとした実験データが無かった(らしい)。血液以外の何に反応するのか、その場合どのような結果が出るのか、実験データの蓄積がないところで、ルミノール反応があったので、そこが殺害現場です、とはとても言えないだろう。

さらに、血液に反応するとして、それが地面におちたものであるならば、血液はどのような土壌で、どのように中に染み込むのか、あるいは、雨が降ったりするとどうなるのか、実験データがなかった(らしい)。

本当に信用して大丈夫なのかと思ったというのが、正直なところである。

番組では栃木県の殺人事件のことがあつかわれていたのだが、どうなのだろうか、冤罪である可能性は否定できないだろう。法医学的に実証することが難しく、自白の信憑性にたよるというのは、かなり無理がある。

法医学において、科学的にこのようであると判断……その判断は、当然ながら幅があるものになるが……があるとして、それを、警察の捜査や裁判で利用するかは、どうやらかなり恣意的な部分があることになる。これは、科学的な考え方とはどういうものであるか、警察や司法において十分に理解されていないということなのかもしれない。

千葉大学の法医学研究室のことが出てきていたが、件数が多くてなかなか依頼された仕事がこなせないので、警察の方からは、もっと早くて安いところに依頼することになるかもしれないと話しがあったということなのだが、このような分野の仕事においても、コストカットが求められているというのが、今の日本の社会ということになる。しかし、犯罪を見逃すことになる、あるいは、冤罪を生むことにつながる、このようなコストカットは、将来的には社会の不安要因になる。警察や司法への信頼につながることである。

アメリカの事例が紹介されていた。参考になることは多くあると思うが、法医学が、警察や検察、また、弁護側から、独立したものであるということが重要だろう。それには、何よりも、法医学の科学的知見を社会のなかでどう利活用できるのか、という視点にたつ必要がある。

2024年7月5日記

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