『ARG』386号の感想2009-08-03

2009-08-03 當山日出夫

『ARG』386号についてすこし。今回の号は、二つにわかれているが、まず、最初の、

羅針盤「法学教員と図書館員がもっと仲良くなるために」(齊藤正彰)

について。

率直に言って、こういう企画ができるのは、実務的な法学の世界だからこそかな、という気がしないでもない。これが、(とりあえず私の専門ということになるが)日本語学、文字論、のような分野では、たぶん、「無理」。

確かに、論文検索や、先行研究の調査は、必要である。そして、こういうことがらについて、図書館の人と一緒になって、ということも必要だと思う。これは、ある意味でうらやましい。

判例の蓄積、ということは、やはり法律の分野だからできるリサーチであるといってよいのではなかろうか。ここでは、リーガル・マインドと、図書館とが、結びつく要素がある。

これを、人文学研究一般にとなると、かなりハードルが高いように思えてならない。私の感じるところ、理由は、次の二つ。

第一に、従来の「知」の枠組みが、あまりに狭く、強固であること。
第二に、そして、それを超えようとしたときには、逆に、とめどもなく広範囲に拡散してしまうこと。

こう思うのは、法律の場合、ある一定の安定性が確保されている、ということを感じるからでもある。安定性がなければ、法律は機能しない。また、完全にガチガチに固まってしまっても、時代に合わなくなる。時代の流れにそって、新しい解釈がうまれ、また、新しく法律も変わっていく。この流れの速度と、教育とがうまく合致すると、図書館と教育は仲良くなれる。

たまたまであるが、今、私がとりくんでいることのひとつ。新常用漢字表。これについて、図書館で調べようとおもったら、どんな情報が得られるか。せいぜい新聞のいくつかの記事ぐらいだろう。今は、図書館は、カラッポである。

だが、これが、10年後にはどうなっているだろうか、予想できない。

ともあれ、

http://web.mac.com/inlawlr/2009/Welcome.html

http://d.hatena.ne.jp/arg/20090803/1249290099

には、非常に興味がある。こういうのが、人文情報学(デジタル・ヒューマニティーズ)で実現できないものかと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)

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