由紀さおり『あなたと共に生きてゆく』2016-09-14

2016-09-14 當山日出夫

漱石の『猫』の苦沙弥先生は、寝るときに必ず本をもっていくらしい。私も昔は、そうしていた。今から考えれば若いときのことである。今では、本のかわりにKindleをもっていくようになった。Kindleの方が、文字がおおきいし、眼鏡をはずしても読める。逆に、眼鏡をかけていると、もう本が読みづらくなってきた(老眼である)。そのKindleも、最近ではあまりつかわないで、カバンにいれっぱなしになっている。で、何をもっていくかというと、Walkmanである。

そのWalkmanで、最近、毎晩のようにきいているCD。しかし、WalkmanでCDをきくというのも無くなっている。CD用Walkmanは、昔は持って使っていたが、いまではもう無い。全部メモリのタイプになってしまっている。だから、厳密には、持っているCDを、パソコンを使って、Walkmanに入れた音楽、ということになる。なお、ファイルの形式は、FLACを使ってる。

このところ、聞いているのが、

由紀さおり『あなたと共に生きてゆく-由紀さおり テレサ・テンを歌う-』
http://www.universal-music.co.jp/yuki-saori/products/upcy-7149/

である。

今の時代である。オンラインでもダウンロードできる。これは、ハイレゾもある。
http://mora.jp/package/43000006/00600406779915/

一昨年(2015)、テレサ・テンが亡くなって20年。それを記念してか、いくつかのCDが出たりした。私もCDを買ったりもした。だが、今ひとつ好きになれないでいた。

たしかに日本語の歌としてうまいのであるが……やはり、どこか無理をしているような印象……母語ではない日本語で歌っていることの無理……が残ってしまう。そのなかでは、かなり以前に買ってあったCDだが、鄧麗君の名前で歌っている『淡々幽情』は好きで時々聞いていた。(中国古典文学の「詞」にメロディをつけて歌っているものである。もちろん、中国語で。)

テレサ・テンの歌は、日本の歌謡曲の歴史のなかにあって、その正統な位置にあると思う。ただ、それを、日本語を母語としない歌手が歌うことによって、かろうじてなりたっていたものであったのかもしれない。

ところで、そうこうしているうちに、最近でたのが上記の由紀さおりのアルバム。なんで知ったか忘れてしまったが、たまたまWEBで見つけて買った。(このごろ、CDを買うのにCD屋さんに行くことも無くなってしまっている。)

これはいいと思っている。

収録曲は、
・時の流れに身をまかせ
・つぐない
・スキャンダル
・別れの予感
・恋人たちの神話
・空港
・夜のフェリーボート
・ふるさとはどこですか
それから、
・あなたと共に生きてゆく(これは、故・テレサ・テンと一緒に歌っているという構成に作ってある。)
・つぐない(これは、ほんとに蛇足だと思う。由紀さおりが中国語で歌っている。こんなことしなくていいのに。)

テレサ・テンの歌……日本における歌謡曲……その歌の魅力を最大限に表現しているのが、この由紀さおりのアルバムであると思う。しっとりとおちついた大人の女の魅力を感じさせる。これはおすすめと言っていいと思う。