「鍵をあける 虐待からの再出発」2023-08-15

2023年8月15日 當山日出夫

ETV特集 鍵をあける 虐待からの再出発

障害者施設で、人びとがどのような暮らしをしているのか、ほとんど知ることがないのが実際かもしれない。記憶に残るところでは、津久井やまゆり園での事件があるのだが、そのときでも、その施設の中の様子が詳しく報じられるということはなかったと記憶している。まあ、これは、事件の特殊性、またその施設の性質を考えれば、やむをないかもしれないが。

精神的な障害者を、社会のなかでどのように受け入れていくべきなのか、考えるべきところが多くある。身体的な安全性を最優先に考えるならば、施設に収容して、なるべく余計な刺激を与えることなく、部屋のなかに閉じ込めておくことになるだろう。

そうではなく、そのような人びとを社会のなかで広く受け入れるべきだという考え方がある。昨今では、このような考え方が浸透してきているといってよい。教育においては、インクルーシブ教育ということが、最近では言われるようになってきている。このような流れにおいて、障害者施設のなかで、どのように生活を送っていくべきなのか、見直しが始まっていることになる。

今の時代、障害者に対して、悪意を持って差別的な立場をとる人は希だろう。(ただし、皆無になったとは言い切れないかもしれないが。)施設において、鍵をかけていたことも、その時点においては、その人たちのことを考えてのことであったろう。

しかし、社会全体の考え方が変わってきていることは確かである。というよりも、社会全体で考えていかなければならない課題である。番組のなかでは、コーヒーのお店を出すことに、近隣の人たちも好意的に受けとめているようだった。このような試みに、社会全体としてどうあるべきか、今後の重要な課題である。

施設の関係者、当事者だけの問題ではないことを、広く認識すべきだろう。

「鍵をあける」というタイトルの含意は、施設内のドアの鍵をあけるとともに、施設が社会に対してもオープンな存在であるべき、ということなのだろうと思った次第である。

2023年8月14日記