100分de名著「司馬遼太郎“覇王の家” (3)人生最大の戦果はこうして生まれた」2023-08-24

2023年8月24日 當山日出夫

100分de名著 司馬遼太郎“覇王の家” (3)人生最大の戦果はこうして生まれた

この回は面白かった。

司馬遼太郎論はいろいろあると思うが、やはりその戦争体験は重要な意味をもつ。戦争のことを知っているからこそ書くことができた、戦国武将、戦乱の世、合戦というものがあるのだろう。もし、日本軍に家康のような司令官がいたなら、という考え方は十分にあり得るものだろう。

そして、それが一九七〇年代に書かれた小説ということも重要である。

このことの歴史的背景として、日本における、戦国時代小説の歴史、というものの考察が必要になってくるかと思う。このころなら、吉川英治などが広く読まれていた時代である。私も、そのいくつかは読んだことがある。そのことから考えても、司馬遼太郎の歴史小説は、ある種の新しさというべきのを持っていたことになる。特に、軍隊という組織を描き、その司令官としての戦国武将を描くということである。

このような発想は、幕末から明治をあつかった作品にも共通していると言っていいだろうう。

司馬遼太郎の戦争体験と、その歴史小説、これは司馬遼太郎の読者にも共通していることである。読者の多くは、それが発表された時代にあっては、自分自身の戦争の記憶に、司馬遼太郎の作品を重ねて読んでいたことと思われる。このことは、司馬遼太郎の作品やものの考え方、あるいは、受容ということを考える上でかなり大きな意味をもつはずである。

さて、近代における日本の大衆文学における、戦国時代の描き方の変遷、誰か研究している人がいるのかもしれない。手軽に読める形であるならば、読んでみたいものである。

2023年8月23日記