記録を残せ:新常用漢字とアーカイブズ2009-04-17

2009/04/17 當山日出夫

新常用漢字のパブリックコメントで、私は、情報の開示をもとめた。それは、いいかえれば、調査データと、審議の議事録を残すことである。

その理由は、「新常用漢字表(仮称)」という公的な漢字集合を決めるにあたって、どのような経緯があったか、残さなければならない、その義務が日本国政府には、また、それを要求する権利が、われわれ(国民)にはある、からである。

映像学部でのデジタルアーカイブ論で、『アーカイブ事典』からの、引用として、フランスのミッテラン大統領のことばを、学生に紹介している。1988年の国際文書館評議会世界大会。

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すべての国のアーカイブズは過去の行為の軌跡を保存するものであり、同時に現在の問題をも照らし出してくれるものである。過去はそのままにしておくと消え去ってしまうから、記録を残すよう努力をはらわなければならない。記録を処分するかどうか、つまり生きてきた存在証明を残すかどうかは私たちの判断にかかっている。この存在証明は積み重なって世の中のできごとがどのように組み立てられているかを知る手段となり、私たち世界のすべての人びとはそれを知る権利がある

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公文書は、アーカイブズとして残されなければならない。そして、その公文書を書くための「目安」である「新常用漢字表(仮称)」の制定のプロセスも、アーカイブズとして残す必要がある。日本国政府には、その義務がある。「新常用漢字表(仮称)」の制定が、我が国の「国語施策」として正しいものであったかどうか、その判断は、後世にゆだねられる。そのための資料(史料)を、残さなければならない。

これは、「新常用漢字表(仮称)」の是非をめぐる議論とは、また別のことである。だが、この発想を持たないで、「新常用漢字表(仮称)」を決めることは、現代の社会において、倫理的に反する行為である。

小川千代子・高橋実・大西愛(編著).『アーカイブ事典』.大阪大学出版会.2003

當山日出夫(とうやまひでお)

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