朝ドラの水落ちシーンの意味は2016-06-03

2016-06-03 當山日出夫

朝ドラ……NHKの朝の連続テレビ小説である。ここ数年、見ることにしている。ただなんとなくということもある。だが、一つの効用として、生活のリズムを作るのにちょうどいい。今年度であれば、朝起きて、朝食。仕事に出る子供を駅まで送って行って帰って、BSの『とと姉ちゃん』を見る。これが、7:30。それから、ツイッターに簡単なコメントを書き込む。学校に行くときは、それから、カバンの用意をして(基本は前日にしてあるが、再度確認して)、自動車で出かける。家にいるときは、書斎で仕事にとりかかる。

ところで、朝ドラを見ていて、気づくこと……ヒロインが水に落ちるシーンが多いことである。今やっている『とと姉ちゃん』(2016前期)でも、常子が水に飛び込む場面があった。深川の水堀に落ちた妹を助ける場面である。

ちょっと思い返してみると……『てっぱん』(2010前期)、『あまちゃん』(2013前期)、『ごちそうさん』(2013後期)、とヒロインが水に落ちている。そして、これらの作品では、水に落ちることが、ヒロインの人生の転機になっている。『てっぱん』では、祖母との出会い、『あまちゃん』では、北三陸で海女になる決意、『ごちそうさん』では、夫との結婚の意思表示であり、そして、今回の『とと姉ちゃん』では、常子一家と祖母との和解、というようになっている。

ここで仮説を言う……朝ドラの水落ちシーンはイニシエーションである。

イニシエーション(通過儀礼)とは、文化人類学用語として知っている。人生の節目の行事・儀式のこと。たとえば、七五三とか成人式など。極端な場合には、一度、擬似的に死んで蘇ったりもする。

こう考えてみると、いや逆に考えてみると……ヒロインの生涯を描くとき、何かの大きな人生のきっかけを表現するのに、水に落ちるという設定は、恰好の状況を作り上げる。水にはいることで、それまでの自分を一度すてて、新たな人生がスタートする。この表象として、水落ちシーンがある。

水に落ちるほどではないが、水が重要な意味をもつシーンも思い出す。『マッサン』(2014後期)では、山崎にウイスキー工場の建設場所を見いだす場面、それから、北海道の余市をウイスキー製造に最適の場所であると発見するシーン、いずれも水(川)が重要な役割をはたしていた。

思いつきにすぎない。しかし、どうやら、朝ドラにおける水落ちシーン=イニシエーション説、というのは、相当の妥当性がありそうである。

なお、イニシエーションということば……学生の時、文化人類学、宗教社会学(宮家準先生)の講義でおぼえたのを思い出す。

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