『「太平洋の巨鷲」山本五十六』大木毅2021-11-29

2021-11-29 當山日出夫(とうやまひでお)

「太平洋の巨鷲」山本五十六

大木毅.『「太平洋の巨鷲」山本五十六-用兵思想からみた真価-』(角川新書).角川書店.2021
https://www.kadokawa.co.jp/product/322005000654/

子どものころのことになるが、山本五十六の映画を見に行ったのを憶えている。私の場合、山本五十六については、軍神というイメージはないものの、真珠湾攻撃を成功させた名将ということで記憶していることになる。

大木毅の本では、これまでに、『独ソ戦』(岩波新書)を読んでいる。軍事史の専門家という認識でいる。その著者の書いた、「山本五十六」ということで、読んでみることにした。(買ったのは本が出てすぐであったが、なんとなく読みそびれてしまっていて、読み終わるのが今になった。)

山本五十六については、これまでに多くの研究や評伝がある。映画などでもあつかわれている。その功績について、非常に限定的に、軍事的な意味合いからのみ評価するとどうであるのか、これはこれとしてとても興味深いテーマである。

ただ、この本は、山本五十六の生いたちからはじまって、やや評伝風の記述がつづく。軍人として力量を発揮した、太平洋戦争開戦当時のことが出てくるのは、かなり読んでからのことになる。

読んだ印象としては、軍事的には……この本の趣旨にしたがうならば、戦略的にはというべきだろうが……なるほど、そうかなという気がする。そして、戦術において、また、作戦において、どう評価することになるのか、このあたりも興味深い指摘である。

山本五十六という、あまりにも神格化されている面があると、私は感じるところがある。純然と軍事的に論じるというアプローチがあってしかるべきであろう。その意味では、この本は面白い。

また、山本五十六の事跡を追うということで、昭和戦前の日本の政治史、外交史についても、いろいろと、教えられるところの多い本である。

2021年11月28日記