DDCH2008-03-13

2008/03/13 當山日出夫

第2回 文化遺産のデジタルドキュメンテーションと利活用に関するワークショップ(DDCH)

Digital Documentation of Cultural Heritage

http://www.chikatsu-lab.g.dendai.ac.jp/arida/The1stWorkshopDDCH/2008_2ndDDCH_announcement.html

いろんなブログなどで紹介されているが、たぶん、上記のものが「本家」=動体計測研究会、とおぼしいので、ここに記しておくことにする。

2008年の3月8・9日の、二日間にわたって、奈良文化財研究所(ここも、いろいろと正式名称がかわるので、ややこしい、通称「奈文研」)で開催された。私は、事情があって、1日目の方しか参加できなかったが、その感想を少し述べておきたい。1日目のプログラムは以下のとおり。


工芸的記録と工業的記録 宮原 健吾(京都市埋蔵文化財研究所)

発掘調査報告書とデジタル化 森本 和男(千葉県教育振興財団)

遺跡の場所性を探求すること-考古学研究における歴史空間の計測 山口 欧志(中央大学)

無形文化財のデジタル保存・解析・利活用 八村 広三郎(立命館大学)

4次元 GIS としてのバーチャル京都の構築 矢野 桂司(立命館大学)

失敗から学んだ計測 田子 寿文(アイテック)


まず、宮原さんの発表。デジタル画像で、いかに正確に色彩を記録するかという観点からは、私自身が、以前に、発表したことがある。昨年の、京大での「東洋学へのコンピュータ利用」セミナー。したがって、論点としている内容は私の考えていることと、かなり重なる。異なるのは、宮原さんの立場が、写真撮影の現場から考えていること。私は、それ(画像デジタルアーカイブ)の利用者の視点から考えている。

デジタル画像をいかに正確に、かつ、安定して、記録し保存するか、という観点で、その仕事の現場の人間がどのように考えているかを知るうえでは、非常に勉強になる。銀塩フィルムからデジタル画像への移行は、根本的な質的な変革をともなうものであることがよく理解できる。

また、「デジタル・アーカイブ」は、いわゆる和製英語であって、日本以外では通用しない。「デジタル・ドキュメンテーション」の方が適切、という指摘は重要であろう。私は、「和製英語」が悪いとは思わない。問題なのは、それで何を意味しているか、ということ。ただ、デジタルの資料を残せばよいというのではなく、その記録・保存・管理、そして、その客観性の保障という観点までふくむものとしては、「デジタル・アーカイブ」よりも「デジタル・ドキュメンテーション」の用語の方がふさわしいだろう。

次に、森本さんの発表。考古学の分野で遺跡の発掘はおこなわれる。そして、その報告書が作成される。では、その報告書は、どれほど作られ、どこがどれほど保存しているのか……という、きわめて基本的であり、重要な問題の指摘であった。日本考古学協会でも、もはや、物理的にすべての報告書を収集・保存することは不可能である、らしい。となれば、PDFのようなデジタル化資料として残すしかない。新しい考古学の研究分野で、GISなどの最新技術が使われるようになっている一方で、過去の発掘報告書の保存と管理がおろそかにされている、という現状は、ある意味で非常に重要である。

ただ、発表の範囲が考古学の発掘報告書の範囲内にとどまっていて、デジタル化した文書資料の保存と利用の問題、さらには、公文書館・図書館との関係などには、深く話しが及ばなかったのは、少し残念な気がする。しかし、限られた時間内での、貴重な問題点の指摘であった。

考古学の発掘で「遺跡」として保存されるのは、ごく一部にすぎない。たいていは、道路建設などにともなうもの。道路ができれば破壊される。つまり、報告書の形でしか、日本の考古学遺跡は、資料として残っていない。「報告書=遺跡」なのである。報告書の保存と活用、デジタル化の問題、この点について、今後、考古学を専門とする人たちの考えていることを、いろいろと聞いてみたいと思った。

當山日出夫(とうやまひでお)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2008/03/13/2739037/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。