英雄たちの選択「権力奪還へ!秀吉七回忌の大祭礼 〜屏風に込められた淀殿の秘策〜」2025-12-18

2025年12月18日 當山日出夫

英雄たちの選択 権力奪還へ!秀吉七回忌の大祭礼 〜屏風に込められた淀殿の秘策〜

この回は、面白かった。だが、すこしもの足りないところもあった。

絵画資料というのは、あつかいが難しいかと思う。

多くの場合は、生活や民俗についての資料としてあつかわれることが多いだろう。その典型は、「絵引」である。『日本常民生活絵引』は、昔、買った本である。今でも書庫の中にある。

屏風絵について、描いてある内容を読みとり、そして、その屏風の作られた意図をさぐっていくというのは、スリリングである。

時代背景として、江戸時代の、徳川政権と豊臣政権の確執ということがあったことになる。

徳川家康が、領地宛行の朱印状を発給していない、ということは、歴史の事実であるが、なぜ、そうであったのかは、いろいろと理由が考えられることになる。番組では、豊臣政権への配慮という方向で考えていた。

豊臣の側、淀殿の立場としては、なんとか豊臣の復権(といっていいだろうか)をねがって、さまざまに画策していたということになる。結果的には、豊臣は、徳川によって完全に滅ぼされてしまう。

この時代、京の都において、人びと……町衆と言っていたが……の支持をどうとりつけるかということが、政権(豊臣)にとって重要な意味があったことは、そうだろうと思う。政治の中心は、京の都であった時代ということになる。(今は、「町衆」は「まちしゅう」と読むのが普通なのだろうか。「ちょうしゅう」という読み方もあったと思うけれど。)

この番組の面白いところは、磯田道史の雑談なのだが……家康が死ぬときのことばとして、徳川を倒すならば弓矢でとれ、と言っていた(らしい)。どういう史料にあることなのか知らないが、歴史の事実としてどうこうということよりも、政治とはそういうものだということを、感じさせるエピソードである。

政治を動かすのには、情、ということがある。それは、民衆の感情であるかもしれないし、為政者の感情であるかもしれない。その情にかかわるのが、エンタテイメントである、ということは、歴史を広く、人びとの心性の歴史ということをふくめて考えることにもつながる。歴史の中にあるエンタテイメント、芸能、芸術……これはこれで、考えるべきことであるが、旧来の歴史学のわくぐみではとらえることが難しいことかとも思う。

飛躍するかもしれないが、おそらく言外に言いたかったことは……今の世の中、いわゆる台湾有事ということで、認知戦ということばが多くつかわれるようになっている。認知戦という観点からは、すでに台湾有事ははじまっているというのが、私の認識である。認知戦だけで、中国は台湾を自分のものにして、その後も、安定的に統治できるのだろうか、ということになるが、これは無理ということである。武力の裏付けがなければ、難しい。力による現状変更ということにならざるをえないし、その後の台湾は香港のようになってしまうことになる。……このようなことをあからさまにNHKの番組の中で語ることは出来ないだろうが、まあ、見ていてなんとなくそういうことなのだろうと思うところである。

お祭りをやって、豊臣の時代は良かったと示すだけでは、不十分である。認知戦だけで勝つことはできない、政権を維持することはできない。これは、軍事と政治のリアリズムをふまえた言い方であると、私は、思うところである。戦国時代を生きてきた、その中で、身内を殺されてきた家康ならではのことばである。

なお、磯田道史が言っていた、御爪点、というのは、日本語学の用語でいえば、角筆に該当するものである。筆で墨で書くのではなく、紙に爪や棒のようなもので、印を付けたり文字を書いたりする。これは、江戸時代まで広くおこなわれていたことである。

番組の時間的制約からしかたなかったのだろうが、現存する屏風に二種類あって、豊国神社のものと、徳川美術館のものとがある。この比較検討ということは、さらにいろいろと興味深いことがあるにちがいない。

2025年12月3日記

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