NHK「時代に翻弄された歌 イムジン河」2020-02-22

2020-02-22 當山日出夫(とうやまひでお)

NHK 2020年2月18日
アナザーストーリーズ「時代に翻弄された歌 イムジン河」
https://www4.nhk.or.jp/anotherstories/x/2020-02-24/10/5581/1453142/

録画しておいて、翌々日に見た。翌日は、伊勢の方に行っていたのだった。

私はこの歌を覚えている。ラジオで聴いた記憶がある。私は、一九五五(昭和三〇)年の生まれである。たしか、中学生のころだったはずである。「イムジン河」という歌が歌ってはいけない歌になったというのを、何かで知った。そのときは、そういうこともあるのかとも思い、何かしら理不尽な気持ちをいだいたものだった。

その後、何かのおりに、この歌について目にすることがあった。そして、この歌が、なぜ禁止になったのか、その理由もそれなりに(納得するというのではないが)分かったような気ではいた。

番組では、この歌の、日本語訳詞の松山猛が、この歌を知ったときのことからはじまっていた。なるほど、そういう経緯だったのか、と思った。また、これにクレームをつけた朝鮮総連の意向も、その担当者の証言として語られていた。(ただ、これも、今の時代の価値観からするならば、著作権の尊重という意味では、むしろ、朝鮮総連の方に理があると思えることではある。)

この歌の代わりに作られたのが「悲しくやりきれない」であることは、この番組で知った。

紅白でのキム・ヨンジャのことは、私は見ていない。

思えば、最初にこの歌が、日本で生まれたときから、日本と北朝鮮、韓国をとりまく情勢は大きく変わった。また、この歌が日本で復活して後も、また大きくかわっている。番組では、この間の日本をとりまく諸情勢への言及もあった。

今、この歌を聴くとすると、YouTubeの、イ・ランの歌だろう。(これは、番組でも紹介されていた。)

https://www.youtube.com/watch?v=qhBQinebAp0

これを聴くと、つくづく時代が変わったものだということを感じる。

ただ、国語学の勉強をしてきた人間の目で見て、気になったことが二つある。

第一は、「イムジン河」(日本、韓国)と「リムジン江」(北朝鮮)の表記の違いがなぜおこるのか、説明がなかったことである。一般に、日本語(いわゆる和語)もそうだが、朝鮮語(韓国語)では、語頭に「R・L」の音がこない。しかし、北朝鮮では、これがある。(これは、韓国の朝鮮語と、北朝鮮の朝鮮語の違いということになる。だから、番組で登場していた、朝鮮学校の先生だった人については、「リ」という表記であった。)

第二は、これはNHKの方針なのだろうが、言語の名称として「朝鮮語」ともいわず「韓国語」ともいわず「ハングル」と言っていた。これは、私の立場からすれば、ごまかしである。「ハングル」とは文字の名称であって、言語の名称ではない。言語の名称としては、「朝鮮語」あるいは「韓国語」というべきである。また、「コリア語」という言い方もあり得る。ちなみに、私が、学生の時、学習した時の科目名は「朝鮮語」であった。

ともあれ、NHKの番組で、この歌について、さらに理解が深まることだろうと思う。そして、この歌は、これからも歌い継がれていくことだろう。イムジン河はいい歌である。

2020年2月20日記