NHKスペシャル「臨界世界 戦慄の占領地 “ロシア化”の実態」2026-01-28

2026年1月28日 當山日出夫

NHKスペシャル 臨界世界 戦慄の占領地 “ロシア化”の実態

見て思うこととしては、まあ、ロシアの占領地としてはこんなもんだろうなあ、ということである(冷酷な見方かとも思うが)。

旧ソ連でおこなわれていたことや、今の中国の新疆ウイグル自治区やチベットでおこなわれている(一部には、これらを否定する人もいるが)ことなどを思ってみるならば、まだ、マシな方と思うこともできるだろうか。

去年、ETV特集で放送していた「琉球ノワール」を見たときに思ったことなのだが、アメリカが日本や琉球(沖縄)を占領支配していたとき、随分と理不尽なことはあったにちがいない。しかし、それでも、裁判となったことについては、弁護側の主張もふくめて、法廷での記録が残されている。新聞も、アメリカ兵がらみの事件をまったく報道することができなかったわけではない。戦争に負けて、軍に支配されいたとしても、最低限の法のルールは守られていた、ということもできよう。(泣き寝入りになってしまった事件が数多くあったとは思うのだけれども。)

日本がアメリカに占領されていた……沖縄、奄美、小笠原などをふくめて……このことの結果として、戦争に負けて占領されるということは、とりあえず平和がもどり、まあまあなんとか生活していける、民主国家にもなったことだし、これは、決して悪いことばかりではない……という思いこみになっているとうべきだろう。(その中でも沖縄は、特に米軍の横暴が酷かったというべきかもしれないし、そのことは忘れるべきではないけれど。)

ロシアの占領地であっても、そこに住んでいた人たちが、全員、強制的にたちのかされて、強制収容所におくられて、奴隷としてはたらかされる……というほどのことはないようなので、ロシアはずいぶんと人道的な占領支配をしていると感じる(かなり皮肉をこめた言い方になるが。)

吠えた犬が殺されたのはかわいそうである。これは、犬は殺すが、人をそう簡単に殺してはいない、ということなのか。あるいは、人であっても、犬のように殺すこともある、ということなのか。さて、どういう解釈をもとめるエピソードになるのだろうか。

取材することが困難だったのか、しなかったのか……もともといたロシア系住民と、ウクライナ系住民との間の関係は、どうなっているのだろうか。ロシア領になって、大喜びしているロシア系住民の姿が映っていても、別に不思議ではない。(このあたりのことについては、番組の意図的なかたよりを感じる。)

ウクライナ人は、ひどい生活を強いられているのだが、それを「民族浄化」というべきほどのこととは思えない。(いや、この戦争によって、結果的に「ウクライナ人」という概念がはっきりとしたものになったというのが、大方の見解かとも思う。)

密告が……と言っていたのだが、これも、昔のソ連にもどっただけのことである。比べるならソ連時代のことであった方が、番組としては、より説得力がある。いうまでもないことだが、ウクライナは旧ソ連の一部であり、旧ソ連に言論の自由などあったとは思えない。昔のソ連のころには、近所の人と、天気のこと以外でも自由にしゃべることができた、ということなのだろうか。私は、むしろ、昔のことの方が知りたい。

こういうことの取材をきっかけにして、第二次世界大戦後、ヨーロッパの各地でどんなことが起こっていたのか、太平洋戦争の敗戦後の朝鮮半島や満州で何があったのか、……あらためて、戦争に負けるというのはどういうことなのか、冷静に歴史を見る必要があると思うのである。

プーチンが悪いとして、それをヒトラーにたとえるのは、私はためらわれる。そういう単純な図式で、歴史の中の人間の精神や判断を語ることはできないと思っている。私は、ヒトラーも、完璧な(あるいは、理想的な?)悪、だとは思わない。同様に、スターリンもである。絶対悪を措定して善悪を判断するということの無意味さを歴史に学ぶべきだろう。絶対善である神が存在しない現代社会においては、逆に、絶対悪を、必要なら作り出す、という時代になっているということに思いをいたすべきである。

見終わって、ふと思ったこととして……この番組を作ったスタッフにとっては、旧ソ連時代のことは、はるか歴史のかなたのこと、「映像の世紀」のできごと、になってしまっているのだろうか、と思ったのだが、これは、私が老人であるということにちがいない。

2026年1月27日記

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